母の日は毎年、婦人部主催でお出かけすることになっている。日ごろ、家事や仕事に忙しく働いているので、母の日はみんなでおいしいものを食べてゆっくりしましょう、ということである。部員が気軽に出かけられるよう、費用は婦人部ができる限り負担。子持ちの人は、子供の世話をしてくれる人さえ見つければ、1日楽しく過ごすことができる。みんな、どことなく楽しみにしている貴重なイベントだ。
去年は船浮を散策したあと、浦内にできたホテルでランチをした。みな新しい施設は気になるので、さっそく訪問してみたのだ。今年はどこに行こうか? 集会で話し合った結果、石垣島に決まり。
「石垣っていうと、市街地であわてて買い物して帰るばかりでしょ。郊外の方とか、みんなあまり訪れたことがないから行ってみてもいいかも」
という意見が出て、裏石垣観光をすることになる。食事はホテルのビュッフェだ。
母の日のアレンジは、下っ端役員の私の仕事である。まず、貸し切りバスの値段の比較や各ホテルの食事内容、観光スポットをチェック。割引交渉も同時に行う。次に部員に相談しながらランチをどのホテルにするか、観光ルートをどうするか決定。最終的な参加者人数を確認しホテルに連絡したり、しおりを作成して参加者に配布。大変な仕事のように見えるが、嫌いな作業ではないので楽しい。
当日は船浦港に8時20分集合。2〜3人の部員が乗り合う車が次々港に到着する。今年は70代以上の大きいお母さんの参加がなかったので、総勢12名。20代、30代が中心の若いグループだ。
「今日の母の日はみんなで楽しみましょう」
船に乗る前、婦人部長のナリコさんが、みんなを集めて簡単な挨拶をした。ヒロミさんは全員に、赤いカーネーションの胸飾りを渡している。造花の花束を切り離して手作りしてくれたらしい。それをみな、カバンにつけたり、服につけたり。おそろいを持ったことで同じグループなんだなぁという意識がわく。
子供を連れてくる人はだれもおらず、みな心なしかのびのびしている。去年、みんなけっこうおしゃれをしているのに私だけみすぼらしかった反省から、今年、私は一張羅を着ていた。
船が石垣に着くと、貸し切りバスへ。まずは鍾乳洞に向かう。ここは市街地から10分と近く、内容もウォーミングアップという感じ。西表に住んでいる人が石垣に来た、というより遠くから来たただの観光客みたいにわいわい楽しんでいる。鍾乳洞の中で2枚、集合写真を撮った。バッチリな構図を決めても、そばにシャッターを押してくれる人がいないと私が写真に入れないのが悩みだ。
次の目的地は、車で30分ほど離れた御神崎。25人乗りのバスに12人しか乗っていないので、みなゆったり座っている。
「外の景色はいつもと変わらないけど、なんだかいいよね」
とキョウコちゃん。石垣の市街地は都会だが、郊外は西表と似たような景色が広がっている。みんなが醸し出しているウキウキ感は、日常をすべて西表に置いてきた開放感から来ているのであろう。私など、大した家事はやっていないし、裏石垣はなん度もまわっているのだが、それでもなんとなく楽しいのだ。
久々に訪れる御神崎は、私のイメージと違っていた。幅の広い上り坂の上に灯台があると思っていたのだが、坂道は記憶よりずいぶん狭い。
「あれ、こんなところだったっけ?」
ここからの海の景色がすばらしいのでぜひみんなに見てもらいたい、とコースに入れたのは私だ。ここだったかなぁ、となんとなく腑に落ちない気持ちで坂を上がっていくと、やっと見覚えのある風景になった。やっぱりここだ。
みんなは思い思いに歩きながら、ときに集まって写真を撮ったり花を観察したり。断崖絶壁から青い海を見下ろし、遠くの島を指さしては「あれが西表」などとやっている。なんとなく楽しんでいるのがわかる。つまらなそうにしていたらどうしようと思ったが、ひと安心。それに、今日は雨が降らなくてほんとうによかった。
今日のメインイベントは、カビラのホテルでのビュッフェである。御神崎を出るころからみんなのお腹は減りはじめていた。なんといっても、8時20分船浦集合だ。みな7時ごろから起きている。朝ご飯を食べてきた私だって空腹だった。川平公園に寄ったころには、
「まだ(ホテルに行って)ランチに入れないんでしょ?」
と待ちきれずに聞いてきた人が数名。
「いや、少しぐらい早くても大丈夫だと思う」
と私。川平公園を予定より早く切り上げ、バイキングへ向かった。
ランチを食べたリゾートホテルは、なかなかおもしろいところだ。元気のいい外国人スタッフが大勢いて、片言の日本語で声をかけてくる。レストランの入り口では、
「こんにちは。ようこそ!」
料理を取っていると、
「いっぱい食べて!」
お代わりをしに行ったら、シェフのかっこうをした人にこういわれた。
「こんにちは。おいしいねぇ」
微笑んで場をやり過ごすのも悪いかなと思い、
「今日はお客さん、多いですね」
とこなれた日本語で返すと、意味がわからなかったらしく、黙って立ち去ってしまった。もっとあたりさわりのない返事をするべきであった。
ビュッフェというのは、経済観念の発達した女性向きなサービスだと思う。普段食べない人も、モリモリ食べる。なん度もお代わりする。
「炭水化物はお腹にたまるから今日は食べない」
という人もいれば、
「タダならもっとワイン飲もう!」
という人もいる。みんな、モトを取ろうとハッスルだ。
また、それぞれの食べ物の好みもわかっておもしろい。こういう場でもサラダをちゃんと食べて栄養のバランスに気を遣う人もいれば、いきなりデザートっぽいものに手を出して食事をほとんどしない人、サラダ、スープ、メイン、デザートとフルコースでガンガン行く人もいる。私は「こんなときでないと食べられないもの」というのがテーマ。和洋中の豪華バイキングだというのに、口にしたのは数種類のパンとチーズ各種、干したプルーンやアンズ、スパゲティなど。貧乏人なんだか普段から贅沢をしているんだかよくわからない選択である。
さて、今日は私の誕生日であった。なにかの拍子にそのことがわかると、キョウコちゃんが三線を弾くお兄さんと歌のお兄さんの2人組を呼んできてくれた。
「Ladies and gentlemen、ここにお誕生日の人がいます。一緒にお祝いしましょう!」
といってレストラン全体でハッピーバースデーの合唱。見ず知らずの人まで、
「おめでとう!」
と祝福してくれたのがうれしい。そしてなにより、婦人部のみんなと一緒に過ごせ、みんなが母の日を楽しんでくれたのがいちばんうれしいことだ。ちなみに、この日の夕食は、ほとんどの人が入らなかったらしい。