いつも手仕事の喜びを教えてくれるノージさんが、今度はアダン葉ぞうりの講習会をやるという。もちろん、なにをおいても参加する私である。
講座は全4回。そのうち3回は午前9時半から午後3時まで。残りの1回は午後8時から10時までとややハード。受講資格は4回とも出席できる地元在住者で、定員10名。エコツーリズム協会から講習会のお知らせメールがくるとさっそく返信したが、受講者に入れてもらえたのか返事がなく、直前まで気をもんでいた。昨日確認したところ、大丈夫、といわれたので、今日は早起きしてウキウキと講座に向かったのだ。
受講者は私を含めて4人だった。アンツク講座などでお馴染みのメンバーは、以前受けていたりスケジュールが合わなかったりでひとりもいない。干立に住むコバヤシさんという男性と、ダイビングショップをやっているリエさん、そしてエコツーセンタースタッフのイタニさんが受講仲間である。企画やスケジュール管理はノージさんの片腕、ノブちゃん。この人が企画し呼びかけてくれるからこそ、いつも素敵な講習会が開講された。
アダン葉ぞうりというのは文字通りアダンの葉で作られるぞうりで、祭のときの正装に合わせるはきものである。節祭に必要ということで、私も一昨年の秋に1足手に入れた。石垣のおみやげ物屋さんで2000円ぐらいだった気がする。今回はこれを作ろうというのだ。
集合した私たちは、カマを研いでまず材料採りへ。エコツーセンターのすぐ横のアダンの茂みに入っていく。といっても、どんなアダンをどう切り出したらいいかわからず、ついていくだけ。ノージさんが葉の長いアダンの新芽に近いところを手際よくバサッと倒し、その塊をひとり2つずつカマに引っかけセンターの庭に戻った。
ここからが、カマの本格的な出番。まずはアダンの芯の近くに刃を立て、葉を芯から外していく。ノージさんがパンパンとリズミカルにカマをふると、葉がどんどん落ちていくが、私がやっても芯にカマが刺さるだけ。1回では外れないのでなん度もふり下ろすのだが、そのたびに違う場所にカマが食い込み、結局いつまでたっても葉がついたまま。アダンが無惨に汚らしくなっていくだけだ。
苦闘の末バラバラにした葉から、今度はトゲを取ることになった。細長いアダンの葉は、トゲでふち取られており、このままでは使えないのだ。そこで登場したのがノージさんの秘密兵器。画鋲のような鉄の釘が3本ついた木片だ。
「こうして置いて、こうして引く」
ノージさんは木の板の上に葉を置き、上から木片の釘を刺し、そのまま葉を手前にすーっと引く。すると両ふちのトゲが取れ、真ん中に2本の細い葉がきれいに残った。トゲを外した葉が材料としてすぐ使えるよう、釘は1cm間隔に打たれている。一見、どうということのない道具だが、すぐれものである。
さっそく、私たちも同じようにやってみる。
「むむむ。ただ引けばいいってもんじゃないぞ」
イタニさんがつぶやく。まったくその通りだ。葉が肉厚だとスムーズに引くことができない。やっと引けたと思ったら、釘が1本かんでおらず2本採れる葉が1本しか切り離せなかったり、引っ張る角度にくせがあり、途中で葉が曲がっていったり。トゲを取ったつもりがたっぷり残っていたり、材料として適さない若すぎる葉を扱っていたりと、みんな苦労している。見るとやるとでは大違いだ。
トゲを取った葉は1人2〜3束にまとめ、シンメー鍋へ。水分を抜くためにゆでるのである。昔はゆでずに使ったらしいが、火に通した方が扱いやすいらしい。なん束かの葉を、根元に近い太いところから、ぐつぐつ煮立ったお湯に入れる。するとシュワーっと音がして、アダンの水分が抜けていく。泡が出なくなり、しばらくしたら引き上げ。煮る時間は1回5分ぐらい。みんなで鍋を囲んで、次々葉束を入れては出す。
水分を切るため、煮上がったアダンはパイプにかけて干す。これで今日の作業は終了。たったこれだけのことしかしていないが、もう3時半である。
「さあ、ブガリだブガリ」
だれからともなく声があがり、庭の片隅にビールが出てきた。ノブちゃんの差し入れらしい。つまみはさっき採ったアダンの新芽とノージさんが朝、採ってきたタケノコだ。
この間から疑問に思っていたタケノコの皮むきは、意外なところで解決した。
「先の所は折ってから、巻いていく。そうするときれいに取れるでしょ」
ノージさんのまねをしてやってみる。先を適当に折って人差し指に絡め、指をくるくるまわす。すると皮がむけ、タケノコの先が出てきた。かたいところは全部取れている。なるほど、こうやるのか。
北海道の人から送られたエゾジカの生食用の肉を、イタニさんが冷凍庫から持ってきた。ノージさんの車からガスコンロとフライパンを出し、切った肉を軽く焼いて食べる。
「う、うまひ〜」
もう少し切って、ゆでたタケノコとチャンプルーにしたり、ゆでたアダンとチャンプルーにしたり。材料も味付けもほとんど同じなのだが、なんだかおいしくてバクバク食べる。
「アダンは捨てるとこないな」
とノージさん。ほんとうにそうだ。気根はアンツク、葉は草履になるし、新芽は食べられる。パイナップルそっくりの実だって、完熟したものを泡盛に漬けるとすばらしくおいしい。ウイ・ラブ・アダン!
結局、フライパンに山盛りの炒め物は、ビール1ダースとともに6人できれいに平らげてしまった。地元の食材を料理し食べながらおしゃべりするこんな時間も、楽しい講座の一部なのだ。