4月1日(金) くもり
去年の夏に買ったプリンターを、やっとつないだ。撮り貯めた写真を配ろうと印刷していたら、あっという間にインクが切れた。しょうがないので石垣の電器屋から取り寄せる。
船積みしますよといわれたので、干立の給油所前で連絡バスの運転手さんにお金を託し、そのお金は港で船の乗組員に託され石垣へ。電気屋さんは船の到着時間までに注文のインクを用意し港で待ちかまえ、お金が届いたのを確認すると、折り返し便に商品を乗せてくれた。テレフォンショッピングみたいなものだ。注文してから3時間ぐらいで手元に届くのがありがたい。しかもポイントカードのポイントもつくので至れり尽くせり。
夕方、電話が鳴った。
「チナミさん、ヤマシタです」
婦人部長のカヨコさんだ。
「いまペンションで野菜を分けているから、もらいに行って」
この間、なん回かに分けてペンションに泊まっていた小学生の一団は、宿泊中にカレーを作ったようだ。ところが買い物をしたとき、材料を間違えてものすごく多く買ったらしい。とても食べきれないので、と置いていった食材を、交流会に出演した人たちで分けているのだ。
十数人の配当は、ひとりにつきジャガイモ11コ、タマネギ8コ、ニンジン2本、きゅうり1本、タンカン2コである。どれくらいあるのかわからなかったので、ボールを持っていこうか迷ったが、段ボール箱にして正解だった。
夕方からはアンツク講座。横縄は編み終わり、あとはフチをかがって取っ手をつけるだけに。もうすぐだ。うれしいぞ!
4月2日(土) くもりのち晴れ
浦内のヨシコちゃんちで、フチの止め方を教わる。ヨシコちゃんは手先が器用で、貝や木の実、ビーズなどでアクセサリーを作り、カレシのお店に置いている。エコツー協会が開催する手わざ講座の常連さんだが、なんでも早くてうまくて、よく覚えている。習った端から忘れていく私とは大違いだ。フチの止め方はいくつか方法があったが、私は彼女のやり方が気に入ったので、教わることにした。
彼女のおうちは、都会でいうとごく普通のアパートだが、あれやこれやの生き物と同居している長屋の住人にすれば、別世界だった。インテリアも工夫している。西表にもこんな住まいがあるんだぁ、と感心した。
「本当はぼろぼろでもいいから一軒家に住みたいの。ボロボロだから好きにしていいよ、っていう家を借りて、自分らしくアレンジして暮らしたくて」
じゃないと、どこに住んでいるかわからないでしょ、とヨシコちゃん。
確かに都会のアパートっぽい快適さだけど、ベランダから見る景色は、まさしく西表だ。それに、ボロボロの一軒家を借りて好きに手を入れて住むというのは、ここでは最高の贅沢。みな望んでいるが、99パーセントの人が叶えられない願いだった。
「そうなのよ。こんなに住宅難だとは知らなくて。来たばかりのころは見に行った部屋を断ったりしてたの。でもそのあと全然見つからないから、あー借りとけばよかった、って」
なん度か引っ越しもしたようだが、こんな物件に落ち着けたのはラッキーである。ちょっとうらやましかった。いかんいかん、私は修行の身だ。
フチを止めはすぐに終わった。そのままおしゃべりしながら粗裂きしてあるアダンの根を細かく裂く。ひとりだと肩が凝ったり目が疲れたりして大変な作業だが、人と一緒にやるのは楽しい。
晩ご飯を食べたあと、ホタルを見に行く。去年は1度も行く余裕がなかったので、今年こそは堪能したかった。ヘルパーとして島に1年暮らし、間もなく内地へ帰る知り合いと待ち合わせ、ホタルポイントの白浜旧道へ。日没時間ちょっと過ぎに到着したが、現場はまだ明るい。
少しずつ闇が下りてくると、ホタルが出はじめた。午前中くもっていたのであまり出ないかと心配したが、そうでもない。今日はわりと多いみたいだ。
「こっちに私の好きな場所があるんだけど」
連れていってもらったところは、絵画のような森だった。目の前はさまざまな木が茂る斜面だ。そこにホタルが一面、光っている。
「……すごい」
言葉が出ない。ふたりとも突っ立ったまま、無言で森を見つめる。ちょっと感動しすぎて、涙がにじんだ。こんなに美しい自然か身近にあるのかぁ。ホタルが見られる心の余裕を、今年は持っていたい。