モズクのシーズンがやってきた。去年はあれやこれやで落ち着かず、それほど採りに行けなかった。それでも自分ではまあまあ採ったかなと思っていたのだが、あとでほかの人に聞くと、みなとんでもない量を収穫していた。
「……そうかぁ。よし、来年は頑張るぞ!」
と決意し、モズクの季節を心待ちにしていたのだ。
モズクに限らず、貝もタコも浜の獲物はみんな大潮の干潮を狙って採りに行く。今日は中潮の最終日。大潮は明日からなのだが、待ちきれずに昨日すでに海に行った。
去年はザルだけ持っていき、採ったモズクの重みに腕が耐えられなくなると、帰ってきていた。でも今年の装備はちょっと違う。発泡スチロールの保冷箱にヒモをつけ、腰につなぐ。ザルは保冷箱に乗せれば海に浮かぶので、モズクを摘むことに集中できる。しかもヒモのおかげで保冷箱は流れていかない。近所の人に教えてもらった工夫だが、初日から威力を発揮していた。
モズクは、採ったらおしまい、というわけではない。きれいに洗って上手に保存しなくてはならない。冷凍するか、塩漬けするか。私は食べるとき塩抜きするのがめんどうに感じるので、ペットボトルに入れてひとまず冷凍。中まで凍った月曜日には、親元に発送してあげよう。高血圧の母親は、モズクを食べたら血圧が下がったと喜んでいた。
モズクの処理が終わって一息ついていると、ナリコさんから電話があった。
「ヒロミさんはシカに行ってるから今日の役員会は来ない」
という。シカがわからなくて、
「歯医者さんですか?」
と聞き直すと、石垣のことだった。石垣の中心部は新川、石垣、大川、登野城の4集落から成り、四箇(四ヶ)と呼ばれてきた。その名残らしい。
夜ははじめての役員会。公民館事務所にヒロミさんをのぞく9人の役員が詰め、今年度の行事予定などを決める。公民館長にはジーボさんが再選されている。私は、来年度引き継ぎの際に苦労しないよう、パソコンを持ち込み議事録をとることにした。これからなにかあるときは必ずパソコンでメモを取るつもりだ。紙に書いてあとで入力するのは二度手間なので。
パソコンを開いていると、ものめずらしいようで、両側からのぞかれる。ナリコさんはPC画面を黒板代わりにして、メモを取っている。特別な情報でははなく、いま話題になっていることしか書いていないが、写すだけがラクでいいのだろう。
役員会の終わりごろ、
「チナミちゃん」
と呼ばれた。総務のヨシハルさんだ。親しげに名前で呼ばれるのははじめてである。
「はい!」
と返事をすると、
「それ、プリントして(僕に)くれない?」
ははは、そういうことなのね。
私は紙のメモよりPCの方がラク。周りの人も、自分で書くより私からプリントをもらった方がラク。パソコンを持ち込むと「かっこつけて」と浮いてしまうんじゃないかと恐れていたが、みんなにとってよいことみたいだ。こうやってひとつひとつ、自分のやり方を認めてもらえたらいいな。
8時半から始まった役員会は、10時半までかかった。そのあとは、新しい役員会の団結を固めるための親睦会。要は顔合わせの飲み会だ。
一段落したころ、ナリコさんと私は帰ることにする。それが夜中の12時。役員は小さい子のいるお母さんには難しいのがよくわかる。しかし公民館の運営がよくわかるので、私のようになんでも勉強したい人間には、大変いい経験だ。
最初の役員会はおもしろかった。小さな村なので、役員はしょっちゅう見かける人たちばかりだ。でもひとつのチームになってみると、特別な親しみがわく。公民館や干立の人たち全体が、いままでよりもっと、身近に感じられるようになってきた。