3月24日(木)〜26(土) 「捜索」 晴れ/くもり/晴れ

3月24日(木) 晴れ

 昨日ほどではないが、まだ寒い。石垣に戻ってきた。いつもの店で自転車を借り、買い物へ。事故のことを知ったのは、自転車を返し、帰りの船の時間まで南国屋のアサちゃんとおしゃべりしているときだ。

「チナミさん、西表の事故のこと、もう聞きました?」
事故? 交通事故とか火事とか?
「新聞に出てますよ、ほら」
23日、アラグスク島を出たカヌー業者と客の母娘3人が行方不明になっていた。

信じられなかった。こんなに身近に、命に関わる事故があるなんて。たまたま知り合いの業者さんではなかったが、カヌー業者の知り合いはなん人もいる。顔見知りのだれかが行方不明になっていてもおかしくないのだ。早く見つかるといいなぁ。

 夜は踊りの練習のため、公民館へ。公民館で運営するペンションに小学生の団体が泊まるため、交流会で踊りを披露するらしい。疲れていたため出演する『目出度節』だけ練習し、さっさと帰って寝る。あーほんとに疲れた。


3月25日(金) くもり

昨晩、カヌーショップをやっているシュウちゃんから電話がかかってきた。
「チナミさん、明日なにしとる?」
「う〜ん、仕事とか、家の掃除とかだけど」
「行方不明になっとる3人を捜索するんで船に乗るボランティアを探しとるんだ。来れたら来てよ。朝8時ちょっと前に上原集合なんだけど」

宮古に行っていたため、仕事が残っていた。本来は今週中にやるべきものなのだが、来週にまわしても大丈夫だろう。今回の事故は他人事とは思えない。なにも力になれないが、できることはやろう。そう思い出かけることにした。

ボランティア船は昨日も半日出ていた。今日は午前9時から午後5時まで1日だ。自分で用意した弁当と飲み物を持って5〜6人ずつバンに乗り、大原港に向かう。港にはけっこうな数のカヌーショップの人たちと、一般の人がいた。観光業とはなんの関係もない知り合いがなん人も来ている。カヌーショップの人たちはお客さんを断り、ほかの人も店を休んだり仕事を休んだりして駆けつけている。船を出す安栄観光もボランティアだ。

港には自衛隊も来ていた。70〜80名で捜索するということだ。迷彩服の一団はやはり目立つ。海上保安庁と自衛隊、そしてボランティア。みんなで協力して早く見つけてあげたい。

海は今日もまだ荒れている。酔うよ、と脅されたので酔い止めを飲む。外が見やすいように、船の後尾、屋根だけがかかっている半屋外の客席に座る。私たちの仕事は、海を眺めて彼らやカヌーや持ち物など、手がかりになりそうなものを発見することだ。

「間違いでもなんでもいいですから、ペットボトルひとつでも見つけたら報告して拾うようにしましょう」
 出発前、カヌー協会の会長さんがいっていた。しかし海は広い。絶望的に拾い。海の深い青さが黒いうねりになると、一瞬頭が浮いているように見え、次の瞬、違っていたと気づく。見つかったらいいな、見つけたい、という気持ちも、目の錯覚を引き起こしている気がする。

お腹がすいた人は静かに隅の方に行き、お弁当を食べて元の席に戻る。だれもなにも話さず、船のエンジンと波の音だけが聞こえる。船酔いした人は、船内で苦しそうに横たわっている。かろうじて酔い止めが効いている人も、薬のせいで眠くなり、睡魔と戦いながら海を見続けている。ときおり、なにか見つけたと思った人が双眼鏡を取り出していたが、船長に報告する人はいなかった。こうして私たちは、9時から5時まで休みなく船に乗っていた。収穫はゼロだった。

今日もそれほど暖かい日ではなかった。海風にさらされ、ただ座っているだけだから冷えるよ、といわれ、最大防寒していったが、それでも船を下りるときには、体は芯まで冷えていた。

 大原港に戻ると、地元のボランティア婦人がお汁粉を持ってきてくれた。ありがたくいただく。
「ほかはどうだったのかなぁ。情報が全然共有できてないよなぁ」
 カヌー協会の会長さんがいう。

「波照間の南100kmでカヌーを発見したって。ただ、本人のものかわからないから、撮った写真を奥さんに確認してもらっているらしい」
 だれかが聞いてきた。それだけでも、なにも手がかりがないよりいい。
「そうかぁ。ずいぶん南に流されているんだな。そこまで行っちゃうと、もう明日は安栄の船では無理だな」
 南風見田沖でサメが群れているという情報もあったという。自衛隊が確認に行くと、マンタとイルカだったというのどかなオチであった。

 帰りの車では、疲れ果ててみな眠っていた。私も疲れていた。なにより寒かった。しかし、家に戻っても、吹きっさらしのお風呂場に行く元気がなかった。ふとんに入ったが、冷えた体ではなかなか眠りにつけない。

 ふとんに横たわったまま、寒かったなあ、疲れたなぁと思う。行方不明になっている3人のことも頭から離れなかった。寒いんじゃないか、お腹がすいているんじゃないか、喉が渇いているんじゃないか。海にいる彼らの寒さは、ふとんにくるまっている私の寒さとは比べものにならないだろう。
明日こそ、見つかってほしい。


3月26日(土) 晴れ

 今日の捜索でも3人は発見できなかったらしい。

夜、ペンションに来た小学生を前に、公民館で『目出度節』を踊る。化粧をしたり、髪を結ったり、着付けをしたりと、準備に時間がかかるわりには踊りは短く3分程度。いいんだか悪いんだか。

踊りの後は、干立の子供たちによるいつもの『モズクンダンス』、ヨーシーの三線と歌など。観客の子供たちはとても真剣に見入っていた。

最後は全員で『うりずん』『あしびなー』を踊る。古典ではなく現代の踊りだ。高校生と違って、小学生は教えると一緒に楽しそうに踊る。踊りながらそれを見ているのも楽しい。


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