9月11日(日) 「イモ掘り・その1」 晴れ

 昨日、来ていた台風は案外あっさり去り、今日は晴れ。停電すらなかったのは珍しいことだ。

数日前から、庭を見るたび三好さんがうるさい。
「そろそろイモ掘りせんと。自分でまいたタネは自分で落とし前つけんとダメだぞ」
私のベニイモを早く収穫しろというのだ。

庭の畑一面に広がっているベニイモは、私が意図的に育てているわけではない。テツコおばあからイモをもらったとき、端の方から芽が出ているのが1コあった。その部分だけ切って水につけておいたら芽が伸びてきた。水栽培だと枯れちゃうなぁかわいそうだなぁと庭に置いたら、いつのまにかつるが伸び放題伸びて、畑を覆ってしまったのだ。このままではたしかに次の植え付けができない。そろそろ取り払わなくてはいけないのだが、おっくうだった。

そのうちそのうち、と先送りしているうち、トヨが畑をやりたいといいだした。影響されやすい三好さんは、そろそろ大根を植える時期だ、と急に張り切りはじめ、イモを収穫して畑をあけるように、と催促しだしたのだ。

 しょうがない、じゃ、いまからやるか。長袖、長ズボンで首にタオル、長靴、つばの広い帽子に手袋という完全装備で外に出る。
「いまからイモ掘りするよ」
 三好さんに告げると、驚いている。

「カワダさんに頼んだらいいよ。ひとりじゃできない、って」
 カワダさんというのはノボルおじいのことだ。しかし私はひとりでやるつもりだ。イモ掘りなら小学生のときの遠足で経験済み。インターネットでイモ掘りの方法も確認した。それよりも、ほんとうにイモができているのか疑わしく、助っ人を頼む気になれないのだ。しかし三好さんは、心配のあまりしつこい。

「カワダさんに頼みなさいよ。にっこり『お願いします』っていえば、喜んでやってくれるから。お昼はソバでいいよ。そしたら僕も手伝うし」
お昼にソバを作るようにいわれたことも気になった。たしかに、協力をお願いしたら軽い食事ぐらいは出すべきだ。しかし私は今日、そこまでする心のゆとりがない。そもそも、八重山ソバの麺があまり好きではないのだ。

私はかたくなに「自分でやる」といいはり、畑に入った。そのとたん、外から見ている以上のつるのはびこりにイヤ気がさした。もうこうなったら、イモはどうでもいいからツルだけでもとろう。

もくもくとツルを引っ張りはじめたとき、三好さんがノボルおじいを連れて戻ってきた。なぜかほっとする。やはり意地を張っていたのか?

「イモが入っているところがわかるように、はじめにツルだけ外すんだよ」
ノボルおじいが教えてくれたようにやるが、そもそもイモがそんなにできていないようだ。
「種イモを植えなかったの?」
種イモはもらって芽が出ていたイモの切れ端1つだけ。
「じゃあイモは入ってないよ。ツルばかりじゃないか?」
だから頼みたくなかったのだ。

ところが、ノボルおじい、三好さん、トヨが手伝ってくれて掘ったところ、予想に反してイモが出てきた。どれも大きくはないが、カゴに集めるとけっこうな量になった。やってみるものだなぁ。畑は苦手なのだが、こうなるとなんだかうれしい。

「今日は収穫祭だな。イモの天ぷらでも作ってくれ」
 と三好さん。なにか軽くご飯でもご馳走しようか。

「あとで耕耘機持ってくるから」
 といっていったん帰ったノボルおじいは、2時間ぐらいしたらまた来てくれた。私の元イモ畑はあっというまに耕され、次の作物の植え付けを待つばかりだ。こんなにまで甘やかせてもらって、ほんとうにありがたい。トヨは遠慮して耕耘機を断り、クワで土を掘り返している。

「夕方、ハヤシライスを作るから、食べに来てね。6時半ね。絶対来てね」
 帰っていくノボルおいじいにお礼をいって、夕飯を誘う。おじいは歩きながら、うんうん、とうなずいているが、用意ができたら迎えに行くつもりだ。


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