9月11日(日) 「イモ掘り・その2」 晴れ

三好さんは珍しく朝からお酒を飲んでいた。彼はこのところノボルおじいと一緒に、給油所の建物修理のバイトをしている。朝早くから夕方まで、きちんと働いているのだ。週1回の休みである日曜は、朝からリラックスしてお酒を飲んでいるようだった。

しかし三好さんは、酒ぐせがあまりよろしくない。特に長時間ダラダラと飲んでいるときが、くせものだ。今日もクワを入れた畑にウネを作っていたトヨに、しきりと話しかけている。

「はい、休憩しよう!」
さっき休憩したばかりじゃないか。台所でハヤシライスを作りながら、心の中でトヨの代わりに突っ込みを入れる。トヨ本人は
「う〜ん、もうちょっとやってから」
といって無視している。「これ、食べてみ!」とか、「キミがそんなに働いたら、僕の立場がない」とか、あれこれいいながら邪魔し続ける三好さん。要は、ひとりで飲むのは寂しいから、相手をしてもらいたいのだ。

そのうちトヨに質問しだした。
「おい、北海道! ここの家賃2万というのは、高いか?」
それを聞いて、ニヤっとする。私が以前、家賃が高いからまけてもらえないか、と相談したのを気にしているのだ。この狭さでお風呂もトイレも戸外で2万円というのは、実際、干立のほかの物件と比較すると高い。ただ、1万5000円ぐらいの物件は持ち主が自宅以外に所有している貸家で、大家さんは収入も別にあるし、空き家にしておくよりはまし、というものだ。家賃収入が重要な生活費である三好さんとは事情が違う。

もともとダメモトで聞いたので、
「冗談じゃない。不満なら出ていけ」
 といわれたときには、しょうがないな、とあきらめる気になった。移りたくてもほかに物件がないからだ。しかし三好さんは、ほかの家並みに家賃を下げてあげられないことを心苦しく思っていたようだ。三好さんっていい人。

「ヤマシタさんはね、2万円じゃ高いというんだよ。キミは高いと思うか?」
 三好さんはまだしつこく、トヨに聞いている。事情も相場も知らないトヨは、答えに困り、
「そりゃ、安い方がいいですけど」
 といった。三好さんの反応は、
「ここが2万円というのは高いかな?」
 壊れたレコードのように、また同じ質問だ。
「僕は石垣で一軒家に住んでたけど、家賃は2万円だったから、それに比べれば高いですね」
 まじめに答えているトヨ。今度は別の返事をしたのに、三好さんはまた同じことを聞いた。

 食事の支度ができて外に出ると、トヨが話しかけてきた。
「チナミさん、ノボルおじいがここまでやってくれたんだから、これでちゃんとウネ作って種まかないと、ダメだよ」
は〜い、と答えたが、自信がない。でもやらないとダメだろうなぁ。ノボルおじいは毎日、散歩がてらここに来るので、怠けているとすぐバレる。早いところ種を買ってこなくてはいけない。

夕方、ノボルおじいを呼びに行き、三好さんとトヨ、私の4人でご飯を食べる。トヨはチキンのトマトソース煮を作っていた。私はハヤシライスとベニイモの天ぷらだ。

「ほう、これはなんという食べ物か?」
三好さんが聞く。これで3度目である。
「ハヤシライス」
ぶっきらぼうに答える私。
「林さんが発明した料理なんだよね?」
と私に向かって確認するトヨ。「なんでハヤシライスというのか?」と2度ほど聞かれ、適当にいったことを、今度は質問される前に答えてくれているのだ。

和気あいあいと4人でご飯を食べていたが、最後は三好さんがノボルおじいにケンカを売るみたいなことになり、気まずい雰囲気のまま解散した。なんでこうなるのかなぁ。もっといけないことに、翌日はなにもおぼえていなかったという。飲み過ぎ、ダメ!


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