9月12日(月) 晴れ
今日から『浜千鳥』の練習は4人。ノブエさんが数日、旅行に行っているのだ。
これまでビデオを師匠に5人で毎日練習してきたが、どこまでやるかについては違う思いを抱いていた。私は、どうせならちょっと頑張って4番までおぼえたらいいのに、と思う。せっかく新しく披露する踊りなのに「今回は2番まで」というのは中途半端だ。お正月に残りを稽古して4番までやっても、今度は「また同じ踊り」としか見てもらえないだろう。それでは誇らしい気分が半減だ。
“頑張ろう派”にはほかに、カヨコさんがいる。ムツミさんは「練習はとりあえずするけれど、出なくていい」というし、ノブエさんは「足も痛いし踊るのがおっくう」と嘆く。このふたりは“頑張らない派”だ。
ヒロミさんは「あくまで中立」という感じでまとめ役にまわるのだが、実は“隠れ頑張ろう派”である。4番までおぼえるのは間に合わないのではないか、という話になったとき、
「こんなことならもう少し早くから練習を始めるべきだった」
と悔しそうにつぶやいたのを私は聞き逃さなかった。
おもしろいのは、みんなの思いが違っても、誰も自分の意見を強く主張しないことだ。カヨコさんは「頑張ったらいいと思うけど……」とほのめかすぐらいだし、私は下っ端なので成り行きを見守り決まったことに従うだけ。
ただ、みんなで踊るので、“頑張らない派”もついていける程度の落としどころを見つけなくてはならない。それで表向き「できれば4番まで。間に合わなかったら2番まで」という話になったのだ。みんな心の中で、今回はきっと2番までだろうなぁと思いながら。
ところがノブエさんが旅に出て、思いの比率が変わった。頑張ろう派がカヨコさん、ヒロミさん、私。頑張らない派はムツミさんひとりだ。俄然、頑張っておぼえよう、という雰囲気になる。
15日に帰ってくるノブエさんは、今回『浜千鳥』には間に合わないだろう。ヒデコさんが『干立村』を踊ることになり一緒にやる人が必要なので、ノブエさんにお願いすることにする。となると、ムツミさんが『浜千鳥』から抜けることはできなくなり、渋々ながらみんなに合わせて頑張ることに。暗黙のうちに、『浜千鳥』は4番まで披露することになった。
こうして、昼・夜各2時間ずつの練習が欠かせなくなる。
「昼も踊って、夜も踊って、疲れるわね」
帰り道、ヒロミさんがいう。まったく同感だ。自分たちの練習以外にめでたいチームの稽古にもつきあっているので、1日中公民館にいる気分である。
9月13日(火) 晴れ
夜、寝られなくなってしまった。眠りについたのは、今朝の4時。夜10時半とか11時ごろまで、こうこうとした中で体を動かしていると、頭も体も興奮し、すぐには寝られない。アンガマのときは昼寝ができたからよかったが、合同練習だと好きな時間に練習するわけにもいかず、昼寝したくなるころ踊ることに。終わってから眠ればいいとは思うが、すっかり目が覚めてもう無理だ。疲れが取れないまま夜、また練習して、またまた寝つけず。疲労がたまっていくばかりだ。
今日は昼、久しぶりにフーミンと石けんを作った。11月に西表である島人文化祭に出店するため、彼女のデザインしたアート石けんを仕込むためだ。
西表や八重山をテーマにデザインした石けんには、「イリオモテヤマネコ」やミンサー織りの「四つと五つ」の柄、「ホタルツアー」「迷彩」などがある。試作品だけど、といって最初に見せられたときには、完成度の高さにかなり驚いた。え、廃油石けんでこんなの作れるの? という感じ。ひとえに彼女のアイデアとデザイン力、それを石けんに仕上げる技術力というか器用さのたまものだ。
今日は石けんの模様づけに使う黒い石けん生地を作った。着色に使うのは、船浦中学校の生徒が焼いたモクマオウの炭だ。墨汁でもいいらしいのだが、西表の素材にこだわっているため、地元で作った炭を使うのだ。
「じゃ、これで炭を細かくしてください。大さじ5杯分ぐらいあればいいです」
とフーミンに渡されたのは、大理石の乳鉢。細かく砕いた炭をこれですっていくという。そして乳鉢で細かくした炭をさらに布で濾し、パウダー状にするらしい。気軽にいうわりには、彼女の要求水準は富士山のごとく高い。
ゴリゴリゴリゴリ……ひたすら炭を細かくする。1時間経過。まだ終わらない。ゴリゴリゴリゴリ……濾した布に残った炭をもう一度する。1時間45分経過。
「これぐらいでいいですね」
やっとOKが出た。
それから石けん生地を仕込み、なにも混ぜない白石けんと、少し炭を混ぜたグレー、いっぱい混ぜた黒を作る。これをパーツに使い、後日作る石けんに組み込んでいくのだ。どうなるか楽しみだなぁ。
お昼を食べたあとは、昼練。そのあと横になるものの眠れず、休憩だけする。そしてまた、夜練習。今日はナリコさんが石垣から帰ってきた。婦人部長がいると、なんとなく心強い。
今夜もまた眠くならない。困ったもんだなぁ。
9月14日(水) 晴れ
昨夜寝たのは2時。前の晩より2時間早くなったが、まだ遅い。ほんとうは12時ごろには眠りたいのだ。両隣のふたりが早起きなので、遅くまで寝ていられないからだ。
今日は背中の左の方が痛い。さわってみると、特に痛いポイントが1カ所ある。押すと激痛だ。内蔵がどこか悪いのだろうか? 練習に行くのをやめようかと思うが、役員なので顔を出さないわけにはいかない。それに、踊りもできていないし。ほかの人が夜しか練習しないなら、昼間、自主練して追いつけるが、昼も夜も合同練習だと、人より多く練習するのが難しい。休んだらおいていかれるだけだ。
踊りのレパートリーが増えるのはいいことだが、練習があまりに過酷だ。30代の私でもそう感じるのだから、60代のヒロミさんたちはよくやっているなぁと感心する。干立婦人のガッツというのは、大したものである。