8月14日(日) くもり
今日は夜、合同で『ソール念仏節』の練習があった。これはアンガマでは一番大事な、いわばテーマ曲だ。
アンガマには細かい決まり事もあるのだが、簡単にいうと“出前仮装パーティ”。参加者は仮面をつけたり、サングラスをかけたり笠をかぶって変装するうえ、高い裏声で話すことで、だれがだれだかわからないようにする。そして家々を渡り歩きながら、三線の音に乗せて歌ったり踊ったりして、この世に戻ってきている先祖の霊を慰めるのだ。
主なメンバーはアンガマのリーダーであるウシュマイ、アッパー、そして女子のサンピキ、男子の太鼓。ウシュマイ、アッパーはどの家でも同じ人がやるが、サンピキと太鼓は過酷なのでローテーションを組み、同じ人が1日に複数回やらなくていいようにする。
サンピキと太鼓がどう過酷かというと、13番まである超大作の『ソール念仏節』の間中、サンピキは両足を斜め前後に広げた状態で中腰に座り、リズムに合わせて重心を前足から後ろ足、後ろ足から前足へとひたすら移動させ続ける。“ヒンズースクワットの前後移動版”みたいな踊りを15分ほど続けるのだ。太鼓の人はその間ずっと、締太鼓をたたいてリズムを取る。しかもサンピキと同じヒンズースクワットをしながら、だ。
はじめてアンガマを見た2年前、蒸し暑い部屋でしたたり落ちる汗をものともせず、厳かに『ソール念仏節』を披露する青年たちを見て、
「私には絶対にできない!」
と強く感じたものだ。それを今年は、私もやらなくてはいけないという。
「途中でつらくなったら、足ついてもいいみたいですよ。カカンに隠れて見えないだろうし」
人数が足りないのでチナミさんもサンピキやってくださいね、といってきたミホちゃんが、ズルを教えてくれる。カカンというのは、サンピキのときにはく、足首まであるプリーツスカートのような衣装だ。
連日の疲労がたたり、今日はちょっと風邪気味。そのせいとミホちゃんに教わったズルの誘惑のせいで、『ソール念仏節』は5番ぐらいで挫折し、足をついた。ま、体調が万全でもこんなもんだろう。ほかの子たちは1人をのぞいて全員、最後までなんとか踊りきっていた。さすがみんな体力あるなぁ。
「本番では暑いしつらいしでもうろうとなってきて、最後は飛んじゃうっていうか。トランス状態に入りますよ」
と、今年は妊婦なのでアンガマに出られないジュンちゃんがいう。やっぱり大変なんだなぁ。
今夜は体調を取り戻そうと、サンピキを1回やっただけで家に帰る。喉のうずくような痛みの兆候が、どうか消えますように。もうさっさと寝よう。
8月15日(月) 晴れ
風邪気味なので冷たい飲み物はやめておく。汗をかくのでマメに着替え、ユズドリンクをホットで飲む。これは千葉に住むユーコさんが、家のユズを蜂蜜につけてくれたもの。カゼで喉が痛いときは、甘くておいしいユズドリンクを飲んでゆっくりしてると、けっこう効く。
昼寝をして、目が覚めたら喉の痛みが引いていた。カゼが少しよくなった気がする。夜の練習では、今日も『ソール念仏節』から。昨日は体もだるかったので途中でひざをついた。今夜はやれるところまで頑張ってみようと思い、いまなん番をやっているか? を考えないようにしたら、いつのまにか11番まで終わっていた。「イテテテ」といいながら、固まった筋肉にむち打って立ち上がり、退場する。やった! やればできるじゃん。
ところが。そのあと『かたみ節』を踊ったら、脚ぷるぷるしてまっすぐ前に歩けない。ああ、なんてこと。みんなすました顔で踊っているのに……。