今日はアンガマ最終日。午後はいつものように、昼寝、練習、お風呂、ご飯、支度、集合。いつもと違うのは、昼寝が3時間だったことだ。ちょっと疲れがたまっているらしい。
今夜訪問するのは3軒。アンガマは事前に依頼のあった家にお邪魔するのがキホンだが、1軒目に訪れるウホ家からは頼まれていない。ウホのおじいは腰の骨を折ってから、思うように出歩けず寂しい思いをしているので、アンガマで元気づけてあげようということになったからだ。うかがうことは事前に知らせてあるが、青年部が勝手に出かけていく押し掛けアンガマだ。
ウホ家で『ソール念仏節』ほか数曲を披露すると、おじいはいつものように、ニコニコしながら楽しんでくれた。勝手に行くのは迷惑じゃないか、と心配したりもしたが、とりあえず訪ねてよかった気がする。
2軒目は、ウホ家と道を挟んで向かいにある、マエカガワ家だ。このお宅は部落では珍しく2階建ての家。すぐ前が浜で、その先は海である。台風のときは恐ろしい気もするが、普段は眺めのいい素晴らしいロケーションだ。
マエカガワ家では、ビールやジュース、お酒のほかに、スイカやお菓子が出た。小さい子どもたちと一緒に、喜んでいただく。踊りの合間にスイカを食べながら、アンガマってほんとうにおもしろいなぁとしみじみ感じる。頼まれた家に行くとはいえ、変装して他人の家に押し掛け、歌ったり踊ったりしながら好きなだけ飲み食いし、最後は家の人に感謝される……。
去年はアンガマの時期、西表にいなかったのだが、干立のアンガマに4日間ついてまわった友人が、
「すんごく楽しかった!」
と報告してくれた。それを聞いて、そんなものかなぁと思ったものだ。一昨年見たアンガマでは、「サンピキが大変」「どの家でも同じことの繰り返しで飽きる」という印象だったからだ。
しかし今年、アンガマをやる方になって、すんごく楽しい、というのがよくわかった。コンセプトはまったく違うが、仮装して人の家を訪れるアメリカのハロウィンに通じる楽しさかもしれない。
最後の家、カトウ家では、時間が気になってしかたがなかった。アンガマは最終日の夜中の12時までには終わらないといけない、と聞いていたからだ。部屋の時計は間もなく12時を指すところだ。もうほとんど終わりとはいえ、20日にかかってしまうのは確実だ。
カトウ家から公民館に帰るとき、なにげなくミホちゃんに話しかける。
「12時までに終えなきゃいけないって聞いてたけど、過ぎちゃったね」
ところがミホちゃんは、まだ真夜中前だという。
「カトウ家の時計、40分遅れているんです。コウイチさんが亡くなったときのままにしてあるから」
カトウ家の主、コウイチロウさんは、4年ほど前に亡くなっていた。残されたマサコさんは、コウイチさんの生前の状態をできるだけ変えずに生活している。遅れがちな時計も、時間を正すことなくそのままにしてあるのだ。
公民館に戻ると、舞台の上の時計は11時40分を指していた。カトウ家の時計はほんとうに遅れているんだなぁ、マサコさん、やさしいなぁ、と思いながら帰り支度をしていると、見知らぬ男性に声をかけられた。
「ヤマシタさんですか?」
そうですけど、と返事をしながら、またパイヌカジの嫁と間違えられているな、と思う。
「でもパイヌカジじゃないですよ」
念のためにいっておく。すると、
「ヤマシタチナミさんでしょ?」
フルネームで聞かれ、びっくりする。この人、いったいなに者だろう?
男性は干立に住むケダモリのおばあの息子さんだった。私の日記をウエブで読んでくれているらしい。
「最近更新が止まってますけど、また書いてくださいね。会社で毎朝、サイトをチェックするのが楽しみなんだから」
とてもうれしい。地元出身の人が私の日記を読んだらどう思うのだろう? 好き勝手なことを書いて困ったもんだ、などといわれるのではないかと心配していたからだ。ここで生まれ育った人が、好意的に読んでくれているのは、ものすごくありがたいことだ。
ついでにいうと、このニーニーは、
「(ウエブの写真より)実物の方が美人だなぁ」
と女性に対する礼儀を忘れなかった。これもまたうれしかったりして(ナハハ……)。