8月23日(火) 「アラシロ家の茅葺き・その1」 晴れ

数日前、隣に住人が引っ越してきた。私の部屋に以前住んでいたシンゴくんの友だちで、トヨという男の子だ。

隣の部屋は5月にキヨカワさんが出ていってから、3カ月も空いていた。最初のころはスーパーにチラシを張ったので見に来た人もいたが、借りるまでにはいたらない。顔が広く、移住希望者のお世話をよくしている民宿・あけぼの館のヒロミさんにも頼んでみたが、
「最近は部屋を探している人、聞かないわねぇ。移住熱も一段落したみたい」
という。

隣に人が入っても入らなくても、私の収入には関係ないのだが、人がいた方がやはり活気がある。三好さんとふたりでは間がもたないというか、ストレートに向き合わなくてはならず、よいところも悪いところも目につきすぎる。3人の方がちょうどいい距離のおつきあいができるのだ。

とはいえ、だれでもいいというわけではない。人柄のいい人がいいね、というのが三好さんと私の共通の希望で、そこそこ気配りができて共同生活の暗黙のルールを守れる人となると、若くても30歳前後か。私は家で仕事をするし、静かな環境が好きなので、大音量で音楽を流し続ける人や、友だちの出入りが激しい人は、壁が薄いだけに避けたかった。私にとってよき隣人でないなら、三好さんとふたりの方がましだとも思っていた。

トヨはシンゴのバンド仲間だという。北海道出身で、年齢は30歳ちょっと。北海道でも、西表の前にいた石垣でも、農家の手伝いをしていたらしい。中肉中背だがしっかりとした体つきで、挨拶がきちんとできるところに好感が持てた。

荷物を運び込んだ日、引越祝いに、とビールをあげると、
「ありがとう!」
といって、その場でおいしそうに飲んでいる。そして片づけが落ち着くと、
「これ、北海道の長芋。送ってきたの。おいしいから食べて」
と長芋をくれた。島のおつきあいの仕方を知っているようで、隣にトヨが入ってよかったなぁと思った。音楽も大音量ではなくちょっと遠慮めのボリュームで聞くし、早寝早起きで夜静かなのもありがたかった。

 前の仕事を辞めたばかりのトヨは、ここ数日ぶらぶらしている。今日も朝からどこかに行っていたが、お昼前、11時ごろ帰ってきて、
「いま、アラシロの茅葺き屋根の修理を手伝ってるんですよ」
という。干立に来てまだ数日なのに、もう地元の家の手伝いをしているなんて頼もしい。そういえば、部屋を見に来た日はアンガマのツヅミで、シンゴに誘われさっそく旗頭を揚げていたのを思い出した。

茅葺き屋根の修理というのはどうやるのだろう? おもしろそうなので見に行くことにする。

うちから数十歩のアラシロ家に行くと、カンコーおじいの茅葺き家の屋根で、ヨシハルさんともうひとり、知らないにいにいが作業していた。地面にはカヤがたくさん積まれている。それを見ただけで、ワクワクする。

「これ、お昼あともまだやっている?」
 下にいたカンコーおじいに聞いてみる。
「やってるよ。終わらないさ」
 ご飯を食べたら私も手伝い来ようかな。
「午後、来てもいい?」
「かまわんよ」
 なにが手伝えるかわからないが、とにかく行ってみよう。


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