今日はエコツーリズムセンターで、ピーデーのカゴ作り講座である。ピーデーというのはシダ植物の仲間、コシダのことで、葉柄で編んだカゴはカビることがないという。そのため西表では、洗濯カゴや食器入れとして重宝されてきた。こげ茶色のつややかなバスケットは、年月が経つほど締まって強くなるというのも魅力だ。
そんなピーデーのカゴ作りを前から楽しみにしていたのだが、朝、家を出ようとしたら、雨が降ってきた。雨天なら延期だ。
「今日は決行ですか?」
エコツーセンター事務局のイタニさんに電話をする。
「とりあえず、集まってください」
そういわれ、カッパを車に積んで、長靴で出発だ。
午前9時過ぎ、集合場所である船浦の民宿マリウド前に到着。そのころには、外はどしゃ降りになっていた。車のドアを開け、傘を広げる間に雨でぬれてしまう。
「こりゃダメですね」
マリウドで7人、雨宿りしながら、イタニさんがいう。
「もし延期にしたら、ノージは今度、いつ時間取れる?」
日程を再調整しようとしているのは助手のノブちゃんだ。
今日の講師であるノージは、これから先、予定が詰まっているらしい。
「1時間もすれば止むよ。午後からできるんじゃない?」
と希望的観測。でも、マリウドでじっと雨が止むのを待ってもしょうがない。時間つぶしにエコツーセンターで、簡単なワラ細工を教えてもらうことになった。
もし雨が降り、ピーデーのカゴ講座が延期になった場合、フーミンと石けんを作る約束をしていた私は、ワラ細工はパスしてフーミンの家に行く。小一時間石けんを仕込んでいると、雨足が弱まってきた。ノージのいうとおり、午後からは晴れそうだ。
お昼前、2台の車に分乗し、みんなで船浦に材料を取りに行く。私とイタニさんはマリウドのお母さんが運転する車に乗り、ノージの車を追う。ノージカーは最初、琉球大学の奥の方までずんずん進んで行った。
「どこまで行くんだろう?」
と話していると、車は停まり、窓が開く。
「戻るよ」
と助手席のノブちゃん。道を間違えたのだろうか?
少し引き返し、パイン畑を上がったところでノージの車は再び停車した。どうやらここらしい。
ノブちゃんが今回の講座の趣旨を説明してくれる。ピーデーのカゴ講座はリクエストが多かったので開催したこと、材料採りは夏の暑い時期しか適さないこと、完成した作品は11月の島人文化祭で展示すること、などなど。
「材料が年々減ってきていて、カゴ作りも難しくなりつつある、ということも文化祭で訴えたいと思っています。今日、最初に行った場所は、去年まで長いピーデーが生えていたんだけど、整地されてパイン畑になってたし」
道を間違えたのではなく、なくなっていたのか!
舗装された道路のすぐワキの斜面に、ピーデーは生えていた。雨はすっかり止み、急にいい天気になったため、蒸し暑い。汗をダラダラ流しながら斜面にへばりつき、ピーデーを抜く。茎を持ってちょっと引っ張ると軽く採れるので、そんなに難しくはない。ただ、同じぐらいの太さのものを集めるのが大変だ。それにしても、マメに水分補給しないと熱中症になりそうだった。
ノージによると、ピーデーにはオスとメスがあり、できればメスをとった方がいいという。オスは途中で二股に分かれているので長い茎が採りにくいし、茎が硬いらしい。メスの方が長くしなやかで、カゴ編みに適しているのだそうだ。女性も男性よりしなやかな気がするので、人間と同じだなぁと思う。
しかしここに生えているピーデーはオスでも長さが十分あるという。そこでオス、メス、関係なく採ることに方針変更。採り分けるなどという根気のいる作業は、この暑さでは、私はとてもやっていられない。一刻も早く材料を集め、日陰に入りたかった。
採ったピーデーは二股に分かれる手前で葉を落とし、根の部分も切る。すると細い竹ヒゴのようなものがたくさんできた。
「どれぐらい必要かな。ひとり90本ぐらいあればいいよ」
とノージ。少し余裕を見て、ひとり100本ずつ持って帰ることにする。多く採っても材料がムダになるだけだ。
ピーデーはすぐに乾燥し折れやすくなるので、編むときには部屋に冷房を入れない。
「あぢ〜」
といいながら、エコツーセンターの床に採ってきた材料を並べる。まず8本を縦に置き、横に重ね、斜めに入れ、あとはそれらの軸をつなぐように丸く編んでいく。
困ったことに、材料はすぐにパキッと音を立てて折れた。どんなにやさしく、ていねいに扱ってもダメである。
「うっそ〜、ショック!」
最初からこれでは気持ちがなえる。やっぱりオスも混ぜちゃったからかなぁ。
しかしほかの人も、同じような状況らしい。
「折れやすいよ、ノージ。材料採りが遅すぎたかな」
助手のノブちゃんも、苦労しているみたいだ。今回は試作、来年に大作を作ると勝手に決め、とりあえず頑張ることにする。
手仕事は好きなのだが、私はあまり緻密ではない。教わった通りに“だいたい”編んでいたのがいけなかったのか、途中、問題が起こった。カゴにならないのだ。
平面で丸く編んでいったピーデは、鍋敷きを大きくしたというか、色紙を上にのせて壁に掛けるようなモノになっている。上手に編んであれば、この段階で胸の前に抱き込むと、すっと締まり、編んだモノが平面から立体に早変わりする。しかし私のは鍋敷きのまま。なぜかカゴに変身しない。いつまでもみにくいアヒルの子だ。
「ダメだね、これは。やり直したら?」
いつもピンチを救ってくれるノージが、あっさり投げる。そうだろうなぁ。これはちょっとフォローのしようがないな、というダメさ加減だ。
こうして編んだりほどいたり、一喜一憂しながら、やっとカゴが完成! いつものことながら、できた瞬間がたまらなくうれしい。特に今回は、もしかして挫折!? というピンチがあっただけに、踊りたいぐらい有頂天だ。
できたカゴを7人で眺めながらブガリをする。ひとつのカゴにはビール、もうひとつのカゴにはゲットウの葉を敷き、たらし揚げをのせる。横にはハイビスカスの花も忘れず添えるのだ。これがまた、とってもすばらしい! ビールもたらし揚げも10倍ぐらいおいしく見える。
来年は材料採りの時期を見極め、オスを徹底排除し、もちろん冷房も入れないで、もうちょっと完成度の高いカゴを作るぞ!