6月1日(水) 晴れときどきくもり
午前6時ごろ、
「起きとるか〜」
という三好さんの声で目が覚める。起きてなかったけど、起きちゃったよ。
「みそ汁、ここに置いとくぞ」
そういって、間もなく出かけたようだ。最近、彼はかつてないほど漁に行っている。こんなに毎日海に行く姿を見るのは、ここに住んではじめてだ。ツキがあるときは行け行けドンドンの人なので、海がおもしろいとなると、とことん漁に出るらしい。
そうなると、三好さんは魚尽くしの生活になる。釣りの成果を毎日刺身やみそ汁にして食べている。私もおこぼれにあずかり、魚三昧だ。彼の作るアカジャーのみそ汁は、なかなかおいしい。今日も部屋の前の冷凍庫の上に、おすそ分けが置かれていた。ありがたい。
午後は平編みのやり方をインターネットのサイトで見ながら、この間作ったアンツクバッグの持ち手を編む。なかなかうまくできてうれしい。
3時ごろ、完成したアンツクを披露しようと、祖納まで散歩に出かけた。すると、テルミグミのおじいが庭のゲットウを大伐採しているところに遭遇。ゲットウは花も終わり、やや見苦しい季節。毎年この時期に手入れしているのだろう。たくさんの葉が地面に倒されているのを目にして、もらい人(もらいピトゥ:私が勝手に作った造語)の血が騒いだ。
「おじさん、このゲットウ、もらっていい?」
「いいけど、なんにするの?」
「お茶とかにしようと思って」
ゲットウは生の葉におもちを包んで蒸すと香りがいい。腐敗を防ぐ効果もあるのでおにぎりを包むこともある。ゲットウを使った化粧水は人気が高いし、乾燥させた葉は刻んでお茶にしたり、編んで敷物にしたり。私とフーミンは廃油石けんに入れたりもしている。いろいろ活用できる植物なのだ。
今日の私は、大量のゲットウを見た瞬間、実はお茶よりもアンツクを作りたいとひらめいた。これまで、アンツクはアダンの気根で作ってきたが、ゲットウの方が繊維が強く、長持ちするという。しかもアダンのようにカビないし、香りがいい。“思いついたら即実行”の私の頭の中は、早くもゲットウアンツク計画でいっぱいになっていた。
家に車を取りに帰り、祖納からゲットウを運んでくる。アンツクは茎の部分を使うので、ハサミで葉を落とし茎だけに。葉はもちろん、お茶になる。100本ぐらいはあるだろうか。葉を全部はずし終わるのに2時間ほどかかった。ハサミを持つ手が痛い。
このあと茎を木槌で叩かなくてはいけないのだが、今日はこれでおしまい。明日からしばらくは、ゲットウ屋さんだ。
6月2日(木) くもりときどき雨
午前中、祖納公民館へ健康診断に行く。採血の順番を待っていると、シオカワさんが声をかけてきた。
「チナミんちの前の街灯、ついたか?」
うちの前にある街灯の電球が、しばらく前に切れた。近所にある電気工事の会社に、電球を取り替えてほしい、と三好さんが頼みに行くと、
「町からの要請がないと電球ひとつ変えられないので、町に働きかけるよう区長にいってくれ」
とのこと。
そこで、区長であるシオカワさんに頼みに行ったが、いっこうに電気がつかず、もう1カ月経とうとしていた。2週間ぐらい前には、しびれを切らせて私も町に電話したが、なんだかのんびりした答えしか返ってこないので、半分あきらめていたところだった。
「ここは海に近いから、普通の電球じゃすぐダメになる。なんのへんてつもなく見えるけど、特殊な電球をつかっているから、那覇から取り寄せるんだ。しかも1コや2コじゃ送ってくれないから、どうしても時間がかかる。都会みたいにはいかないんだよなぁ」
なるほどねぇ。
午後はゲットウの茎を叩く。これがまたおそろしく固くて、指の皮がむけそうになる。2時間ぐらいやってやっと3分の1をやっつける。しかし、教えてくれる人もなく、聞きかじりの知識でやっているので、正しく処理できているのかわからない。この作業がムダにならなきゃいいのだが。
夜は残りの縄で小型のアンツクを作る。これで3コめ。
6月3日(金) くもりときどき雨
午前中はまた、ゲットウをトントンする。さえない作業を根気よくやっていると、
「きみはえらいなぁ」
と三好さん。
「あきらめないのがえらいよ」
ほめてくれているらしい。
「この気の短いのがよくやってるな、と感心する」
あら。短気なのはもうお見通し?
叩いてほぐした茎は、天日干ししなくてはいけないのだが、あまり天気がよくない。雨にあたると黒く変色するので、車の後部座席を倒し、新聞の上に広げて並べる。叩かれてよれよれのゲットウの茎は、なんだかよくわからない物体になっていて、ほんとうにこれが縄になるのか、非常に疑わしい。どうしたものか?