2月12日(土) 「ヤマネコマラソン2005」 晴れ、夕方一時雨

 今年もやまねこマラソン大会がやって来た。去年、地元の知人が大勢出ているのを見て、
「いいなぁ。来年は出てみたいかも」
 とちょっとだけその気になったのたが、しょせんは一時の気の迷い。走るのは苦手なこともあって、「1年かけて23km走れる体にする」という目標は、一度もトライすることなく崩れ去っていた。

 ということで、今年も応援隊である。地元、干立でエイドステーションを設け、給水などをお手伝いするのだ。やることは去年と同じだが、違う点がいくつかあった。まず、私たちボランティアに配られるお弁当。主催の竹富町が緊縮財政なので、やまねこマラソンの予算も削られ、お弁当のグレードが下がっていた。去年はなかなか豪華だったのに、今年は白飯にささやかな箸休めがちょこっとついている程度。「200円ぐらいのお弁当なんじゃないか?」というウワサだ。しかも数が限られている。昨年は広く行き渡ったが、今年は最初から最後まで本気で手伝う人の分しかない、という感じである。

 予算削減の影響はランナーに提供する飲み物にも現れていた。去年より種類も量も少ないのだ。去年はスポーツドリンクが、ポカリスエットとアクエリアス、アミノバリューの3種類。しかし今年はアミノがない。しかも500mlのペットボトルではなく、2リットルのボトルでやって来た。まあ、どうせ紙コップについで出すのだから、ゴミが少なくてすむ大型ペットボトルの方が本当はいいのだ。でも、やまねこマラソンで出る500mlの空きボトルを、きたるべきモズクシーズンのためにもらっておこうと思っていたので、あてが外れた気分だ。

 しかしいいこともあった。スタッフに配られるTシャツが、今年はおしゃれ。紺地に白抜きの絵柄。ヤマネコの顔が胸のところに小さく入っている。バックは弥勒とオホホの面である。節祭は祖納、干立両部落行っているが、オホホがいるのは干立だけなのだ。
「今年のTシャツはかっこいいね。普段でも着られそうじゃない?」
 と手伝いにきていたキョウコちゃんがいう。私もそう思う。それに、はやりの速乾素材を意識してか、ポリエステル100パーセントだ。本当にハイテク素材なのか、ただの安物なのかはわからないが、泳ぐとき着たりするには問題なさそうだ。

 私は今年もスポンジの給水係をやることにした。去年はお盆の上に、たっぷりと氷水を含ませたスポンジを並べ、ランナーが取りやすいようお盆ごと突きだして待っていた。それはそれでよかったと思うが、今年は少し工夫し、スポンジを手渡しするやり方に変更。その方がランナーには取りやすい気がしたのだ。

やり方はこうだ。ランナーが来る。スポンジを手に持ってランナーの手のあたりに出す。いらない人は無視して通り過ぎるが、案外多くの人が受け取っていく。コツは、ぽんと渡すのではなく、ランナーの動きに合わせてスポンジを持つ手をフォロースルーすること。そうすると渡しそこねてスポンジが地面に落ちて、互いにガッカリすることもない。大勢の人が一気に通るときは忙しいが、ほとんど取りこぼすことなく「スポンジいかがっすか〜」というサインが送れたのはうれしかった。

しかし後ろの方で給水スポンジを渡していたジーボさんは怒っている。
「なんであんなに渡すか! はい、ってあげたらみんな持って行くじゃないか!」
毎年だいぶ余るのである。数年来の使わなかったスポンジが、公民館の倉庫にはたんまり眠っていた。
「いいじゃないね、そんなケチなこといわなくたって」
 キョウコちゃんが笑いながらあきれている。
「自分のスポンジは受け取ってもらえないから、ひがんでるのよ。あたりまえじゃない、おじいのスポンジより、若いネーネーのスポンジの方がいいに決まってる」
とユキちゃん。私の方が、エイドステーションの前方にいるからみな取っていくのだと思っていたが、後方のジーボさんを見ると、お盆に載せたスポンジを隠すように持って立っていた。あれでは取りたくても取りにくいだろう。

ただ困ったことに、この日は日差しが強かったのとスポンジを取りやすくしたのとが重なって、復路が始まったばかりのときにスポンジが足りなくなってしまった。
「どうしよう……」
 あとのランナーに申し訳ない。ナリコさんはきれいそうなスポンジを水で洗い、使いまわそうとしていたが、とうてい間に合わない。

 すると、さっき文句をいっていたジーボさんが、公民館から去年使わず残ったスポンジを持ってきてくれた。このときほど、彼をスーパーマンのように思えたことはない。ありがとう、ジーボさん。

 こうして最後のランナーまで、無事、スポンジを渡し終えた。今年もなかなか楽しい大会であった。

 しかしランナーたちの戦いは、これで終わりではなかった。

 表彰式が終わった後、夕方からわいわいホールで、恒例の打ち上げパーティがあった。目玉はこれまた恒例の、本物のサバニにお刺身を載せた舟盛り。座るところがないぐらい人で埋まった会場の一角には、ぽっかり空いたスペースがあった。ここにサバニが入るのだ。

「みなさん、サバニの入場です。場所をあけてください!」
 司会のミサオさんがマイクを通して呼びかける。が、空きスペースの近くの人たちは、場所をあけるどころか腰を浮かせてにじり寄り、入ってくるサバニに向かって突撃態勢だ。

「さあ、サバニが入ってきました! 押さないで押さないで、危ないですから……」
 注意を促すが、だれも聞いちゃいない。サバニは定位置に置かれた後、公式の写真撮影をして「みなさんどうぞ」となるはずだったが、床に置かれたとたん大勢の人に襲われ、あっという間にボウズになっていた。あー怖かった。写真撮影どころではない。

 ところが外に出ると、もう一艘、テントの下に舟盛りのサバニが置いてあった。その船には、ところどころにカツオのお刺身とイカ、タコ、そしてボイルされたイノシシの薄切りが残っていた。私がちょっとつまむ分には、これで十分である。残り物に福、な夜だ。


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