1月1日(土) くもり
朝方トイレに目覚めたあと、2度寝して起きたら11時40分だった。びっくり。正月の朝がなくなっていた。
昨日ほどの寒さではないが、それでもかなり冷える。年賀状の返事などを書いて過ごす。郵便局は年末年始、無休でやっている。局長のミサオさんは忙しそうに立ち働きながら、
「退職するまで御用納めはないですよ。西表には観光客の方々もいらっしゃるので、今やらないでいつやるのかという感じですね」
と淡々。すばらしい。
1月2日(日) くもり
毎年1月2日は、生まれ年の人たちを村全体で祝う合同生年祝い。着物を着ている人も多く、おじい、おばあもとびきりおしゃれをしている。1年でいちばん華やぐ会らしい。
生年祝いでは、年男、年女を前に、出し物を披露するのが慣わし。おもしろいのは、生まれ年の人のいる家が踊りや歌などを出す習慣だ。今年は数えで97歳になるソケイのおばあちゃんの家と、家族で3人も生まれ年がいるギマ家から踊りが各1点。家族が踊るのだ。ほかに、婦人会や子供会などが踊りやダンスを出してお祝いすることになっている。
昼過ぎ、身支度をして、料理を1品持って公民館へ。一品携帯といって、婦人会で料理を作る余裕がないときは、自分の食べる酒肴は自分で用意しなくてはならない。
今日はいよいよ私の踊りデビューである。『目出度節』と『干立口説』のお披露目だ。2日間練習していないけど、忘れていないかなぁ。
楽屋に入り、わさわさ身支度する。「早めに支度を終えて、裏でちょっとおさらいしよう」ということになっていたが、そんなヒマもなく出番になる。直前まで緊張はなかったが、舞台の袖に並んだらちょっと気持ちが引き締まった。
三線が始まり、私を先頭に3人で出ていく。立ち位置につくと、
「チナミ!」
と声がかかり、思わずニヤリ。紋付き袴姿のシオカワさんだ。応援してくれる人がいるのはうれしい。
踊り出したらあっという間だった。もともと短い曲なのだが、瞬時に終わった気がする。踊りは緊張のせいか、練習のときより小さくなってしまった。修行が足りんのう。あれやこれやと支度に時間がかかったわりにはあっけない。
次の曲まで間があるので、洋服に着替え、ユキちゃん、キヨキヨと軽く打ち上げをしながら舞台鑑賞。ビールを飲んでいたら、
「早く着替えないと、間に合わないよ!」
とナリコさんに呼ばれ、再び準備。踊りが違うと衣装も替わるので、着替えも大変だ。
5人で踊る『干立口説』は、舞台に出る瞬間から楽しかった。竹婦連の発表会メンバーと一緒に踊るので、私が足を引っ張ってはいけないと思うのだが、狭い舞台に大人数いることの安心感の方が勝ってしまう。とっても楽しく踊ることができた。
1月3日(月) 晴れ
久々にとても暖かい。今日は婦人部新年会。また一品携帯だ。昨日は大根とイカの和え物を持っていったが、今日はリッツにする。トッピング用に、ゆで卵のみじん切りマヨネーズ味、ツナ&タマネギのみじん切り、チョコレートホイップ、クリームチーズを持参。子供にも大人気だ。
婦人部新年会というのは、部落の女性たちの新年会である。年齢制限の65歳を越えた婦人部OBおばあたちが楽しみにする催しだ。今日もおばあはみなおしゃれをしている。この会が生年祝いとどこが違うのかといえば、ひとり一芸披露しなくてはならないことだ。私はいったいなにをやればいいのだろう……。
くじを引き、芸の順番を決める。順番が回ってくると芸を披露し、終わると景品をもらって席に戻る。トヨおばあは、自分の番になると立ち上がり、しゃべりはじめた。
「私も80歳まではこんなにシワもなくて、歌も踊りもできたのですが……」
お話しだけで終わるのかと思っていると、おもむろに懐から出したてぬぐいを頭にかぶり、人形を出して歌い踊り出した。とたんに会場がわく。人形といっても、つい数分前にタオルをまるめて輪ゴムで縛り、割りばしで足をつけた特製人形だ。小柄なおばあが歌いながら割りばしを動かすと、タオル人形が愛くるしく踊り、とてもかわいい。けっこうすごい芸かもしれない。
同じく80代のダズコさんは、元学校の先生らしく、場を盛り上げるのがうまい。ちょっとしたお話しをしながら、金太郎とか桃太郎とかの、世代を越えて知られている唱歌をみんなから引き出すと、自動的にワンフレーズ合唱となっていく。声を合わせて歌うというのはなかなか楽しいものだ。
新潟出身のムツミさんは『佐渡おけさ』を踊り、「なにも芸がないので」と挨拶したアキコさんはアカショウビンとカンムリワシの鳴き真似をした。なにをやろうか、玉すだれをもってくればよかったなどと思っていたら、ユキちゃんの番になった。
「えっと、昨日はあっというまに終わって踊り足りないので『目出度節』をやります」
ということで、キヨキヨとふたり駆り出され、ブルーのサテンでできた、フラダンスのときにはくようなフリルのスカートをはいて、頭につけるサラシを締めて、普段着のまま踊る。けっこうウケた。
キヨキヨの番には、キヨキヨを真ん中にしてもう一度『目出度節』。これがバカうけで、なにがそんなにウケたのかと思ったら、キヨキヨが大きく間違えたかららしい。それも愛嬌だ。
さて、私の番にはいくらなんでも『目出度節』はもう通用しないだろう、と思っていたら、
「『干立口説』をやれ! ヤマシタチナミがひとりで踊るのを見たい!」
と公民館長のジーボさん。この人は、竹婦連の発表会のとき、私が踊りのことで悔しい思いをしたのを知っている。だからこういってくれている気がする。とてもうれしい。
とはいえ、ソロで踊るなどという滅相なことができるはずもなく、ほかの4人といっしょに5名で舞台に立つ。しかし、私は前列中央だ。もう一生ないだろう。だいぶ気持ちがいい。昨日よりさらに楽しく踊る。
「チナミちゃん、昨日よりよかったよ。昨日は踊りがほかの人より早かったけど」
とアキコさんが声をかけてくれる。あちゃ、そうだったのか。でもほめてもらえたのはうれしい。また踊る機会があるといいな。