1月15日(土) 「西表小中学校駅伝大会」 くもり一時雨

数日前、郵便局でセイちゃんに呼び止められた。
「いいところにいた! チナミちゃん、15日、ヒマ?」
 なんか、嫌な予感。ヒマといえばヒマだけど、やらなきゃいけないことはいろいろある。
「……なにかあるの?」
「西表校の駅伝大会なんだけど、うちのチーム、人数が足りなくてさ。出てくれないかな」

西表小中学校では、毎年、駅伝大会を行っている。7人1チームで、1区間600mから長くて1km。子供だけでなく、PTAや地元の商店も出場するらしい。
「人数が足りなきゃ出なきゃいいじゃん」
 走るのが嫌いな私は、出場を避けるために意地悪をいう。
「そうもいかないんだよねぇ。頼むよ、よろしくね!」
 といってセイちゃんは郵便局を後にした。

今日はその駅伝大会である。2日前、600mならなんとかなるかな、と走ってみたところ、100mぐらいで足が止まってしまった。もう走れない。
「こりゃ全然ダメだ。思った以上に足が動かない」
はっきり出るといったわけではないし、絶対に行くもんか、と思っていたが、昨日、改めて頼まれるといやといえなくなった。歩いてもいい、というので、早起きして学校に向かった。

校庭の片隅では開会式が行われていた。子供たちがチームごとに抱負をいっている。驚いたのは大人の参加チームの多さだ。保護者はもちろん、地元祖納にある郵便局、ホテル、商店などが全部(といっても3つ、4つだが)出ている。祖納商工会が参加、という感じだ。学校のはす向かいでラーメン屋を営むセイちゃんが「出場しないわけにいかない」というのももっともだ。

軽く体操をしたあとはいよいよスタートである。近所のおじい、おばあたちがパーランクというタンバリンのような太鼓を鳴らして応援する中、一斉に走り出した。学校を出ると干立に向かって走り、集落内を抜けて学校に戻ってきたら、今度は祖納の中を行く。それを2周したらゴールだ。

第4走者の私たちは、校門で出番を待ちながら、干立から戻ってくる選手たちを迎えた。ランナーの前後にはパトカー。公道を走るため、事故がないよう東部の駐在所からも応援が来ているのだが、助手席にはなんと、ホテルのおかみさん。

「2位は○○くんです。いつもはおとなしい○○くんですが、今日は全力で頑張っています。3位につけているのは郵便局チーム。走っている××くんは、今日は石垣から駆けつけてくれました。がんばれー!」
パトカーのマイクを使っての実況中継である。すごい。

たすきを渡される直前、隣に立つ小学1年生のミサキちゃんが私にいった。
「絶対負けないからねっ!」
 闘志むき出しである。頑張ってくれ。私は勝ち負けどころではなく、走り通せるかが心配なのだ。

 上原から駆り出された青年からたすきを渡され、スタート。やや上り坂なのだが、周りにあおられ走り続ける。おなじころ走り出したザキ兄はサンダルばきなのにひょいひょいと軽快に進み、あっというまに行ってしまった。

「待って〜」
 とすがりながら重い体を引きずり、ミサキちゃんを追い越す。しかしそのあと2人ぐらいに抜かれた気がする。沿道のあちこちに立つ知り合いが声援してくれるが、手を振り返す余裕もない。

フラフラになりながら、やっとゴール。長いような短いような600mだったが、驚異的に疲れた。全身と、それから内蔵もヘトヘトになっている。こんなに走ったのは小学校以来ではないか。

閉会式と表彰が終わると、あたたかいお汁粉が待っていた。私はこのために来たようなものなので、しっかりおかわりまでいただく。小さな学校の駅伝大会だが、おじい、おばあから寸志が寄せられたり、魚汁の差し入れやお手製蒸しカステラがあったり。学校に上がっていない子供からお年寄りまでみんなで応援して、みんなでお汁粉を食べて、地域に根ざした立派な行事なのだ。

あとで東部の知り合いに、
「600m走って、死にそうになりましたよ〜」
 というと、
「あら、こっちの学校では、昔、白浜〜南風見田っていう駅伝があったらしいわよ。やる人がいなくていつのまにかなくなったけど」
 ひえ〜。白浜〜南風見田といえば、島を走る道路の端から端で、約40km。そんな駅伝に誘われても、とても出られましぇん。


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