12月20日(月) くもりとか雨とか
婦人会の定例会。今回はお正月2日に行われる合同生年祝いの打ち合わせだ。西表では毎年1月2日、集落ごとに生年祝いが行われる。年男、年女に上座に座ってもらい、ゆかりのある人たちがいろいろな出し物でお祝いするのだ。
私は去年が生まれ年だったが、公民館に入ったのは4月なので祝ってもらっていない。しかし、夏ごろお祝いは包んだ。生まれ年の人がお金を出し合い、公民館に物品を寄贈する習わしがある。去年は、舞台の背景としてかける幕を贈ることにしたらしいが、未年生まれが少なく資金が足りないと聞いたからだ。
「今からでも、お金、間に合います?」
と私。幕のことをとりまとめていたノブエさんは、もちろん、という。
「ほかの人と同じように、名前も入れてもらえるんですか?」
「大丈夫よ。幕の絵が完成してからだから。干立の風景を描いてもらっているの。まだできあがってないけど」
ゲンキンな話だが、それを聞いて、お祝いを包むことにした。幕はボロボロになるまで恐らく数十年は使ってもらえるだろう。自分の名前がこの干立のどこかに残るのは、すてきではないか。
今日の定例会は、婦人会でどんな出し物をやるか決めるためのものだ。その取り決めはリハーサルの10日ぐらい前に行い、節祭などの練習はじめと同じように「トリチキ」と呼ばれていた。
みんなが集まったころ、カヨコさんもちょうどホワイトボードに演目を書き終えた。
1月2日13:00〜
1. 御前風(ソケイより)
2. 鷲の鳥節(ギマより)
3. 松竹梅鶴亀 ヒロミ、ノブエ、カヨコ、キョウコ、トモミ
4. 干立口説 チナミ、トモミ、キョウコ、ユキエ、タケ
5. 目出度節 ユキ、チナミ、キヨコ
村の酉年生まれの最長老はソケイのおばあちゃんである。たしか来年、数えで85歳だ。そのためお祝いに、家族が『御前風』という舞踊をやるらしい。これが座開き(*1)になる。
『鷲の鳥節』を出すギマ家は子だくさんで、家族の中に生まれ年が3人いるという。よってギマ家からも1曲あるようだ。
「ほかにいい出し物はないですかね?」
提案する人さえいれば毛色の変わったものでもいいのだが、今出ているのは古典ばかり。なにか違うものがあったらいいなとは思うが、アイデアも教えられる人もいない。
「人はいないし、曲はないし……こんなもんですかね」
カヨコさんがひとりごとのようにいう。出産直後の人や里帰りしてお正月にいない人が多く、踊れるメンバーは私を入れたとしても8人だ。
結局、その8人で3曲踊ることになった。踊りの難易度などから、だれがなにをやるかは自然と決まってくるようだ。『松竹梅鶴亀』はベテラン3人と踊りのうまい若手2人。『干立口説』は竹婦連や青年会で踊ったメンバーと私の、合わせて5人。『目出度節』は経験者のユキちゃんと、4月に移住してきたばかりのキヨキヨ、そして私だ。
竹婦連の芸能発表会のときにはあれだけいろいろあったのに、内輪の会となると、踊れるならいくらでもやって、というノリだ。私は今回、初心者の登竜門『目出度節』を踊らせてもらえるばかりか、どうやら『干立口説』にも出られるらしい。でも「すごくうれしい!」とか「頑張るぞ!」といった情熱は意外にわかず、「へー、そうなんだ」という感じ。こんなに他人ごとでできるのだろうか。
踊りも決まり、リンゴを食べながら雑談していると、ナリコさんがおもしろいことを教えてくれた。
「昔はよ、熱が出たときはよ、糸芭蕉で治したよ」
糸芭蕉を倒して幹を叩いたものを枕にし、熱冷ましにした。幹から出た汁は全身にも塗ったという。
「そうそう。小さいころやってもらった覚えがあるよ」
カヨコさんも相づちを打つ。いまでは幻の織物のようになっている芭蕉布だが、昔は野良着だった。芭蕉布を織るための糸芭蕉は、織物以外にも日常生活でも使われていたのだ。
ほかに、フーチバー(ヨモギ)の新芽を煎じた汁を飲み、残りカスを頭からつま先まで全身に張ることも熱冷ましに効くという。こんな話が聞けるから、婦人会の集まりも悪くない。
(*1)座開き: オープニング。
12月21日(火) 晴れ
三線の師匠、ミサオさんの門下生を集めたクリスマス会があった。といっても主役は40人近い子供たち。10人足らずの大人生徒はおまけのような存在だ。
最初は公民館の舞台に全員で上がり、4曲ぐらい弾く。子供たちはみなうまく、工工四(*1)を広げている子はいない。子供は記憶力がいいからなぁ。
食事の後はビンゴ大会。島で行われたイベントなどで、子供たちが演奏してもらった花金(おひねり)が1年で6万円以上貯まったらしい。それが全部、ビンゴ大会の賞品になっている。しかし大人の分はない。がっくし。しょうがない、うまくなって花金が投げられるようにならねば。
少し遅れて踊りの練習に行く。八重山の踊りがまったく初心者のキヨキヨと比べるため、
「扇の持ち方や歩き方の基礎ができている。先生に習ったからよ」
とナリコさん。あれ? 私は基礎からしてなってないんじゃなかったっけ? 周りの人は、その場の思いつきでものをいうのだなぁ。なにをいわれても、気にしない気にしない。
『目出度節』を踊ることになり、
「またゼロから1曲覚えなくちゃならないんだぁ」
と憂鬱だったが、やってびっくり。すごく踊りやすい。『干立口説』は1番が長い上に7番まであり、振りつけも複雑。それに対し、『目出度節』は1番が短く3番までしかない。繰り返すところも多い。1時間ぐらい練習したら、1番はだいたいつかめた。あのときの苦労は役立っているらしい。
(*1)工工四: 三線の楽譜。