11月23日(火)・24日(水) 「西表青年祭/満産祝い」 くもりときどき晴れ/くもり

11月23日(火) くもりときどき晴れ

西表青年会の芸能発表会が今年もやってきた。西表青年会とは、干立青年部と祖納青年部の合同組織である。去年は古典舞踊のほかに、男性のフラダンス、女性のベリーダンス、コメディタッチの寸劇などが混じり、料理も出し物も大変盛りだくさんだった。

比べると今年は、料理はカマイ汁、牛汁のみ。島酒は例年のようにふんだんにあるが、去年のようなカマイや魚の刺身、天ぷら、フライドチキンなどなどは見あたらず。私は
「ご祝儀包んだんだけどなぁ」
と物足りない。ナリコさんも
「あんなだったら100円にしておけばよかった」
と文句をいっている。青年会では青年会館を作るため、ご祝儀はがっちりと建設資金に回すらしい。

そのうえ演目も去年より少なく、発表会はけっこうあっさり終わってしまった。しかしひとつひとつの出し物の内容は悪くない。古典が中心だったが、ひとり2曲ぐらいは出演していただろうか。みんな忙しい中、時間を見つけてよく練習したと思う。


11月24日(水) くもり

午前中、近所を散歩をしていたらノブエさんに呼び止められた。
「チナミちゃん、おにぎり作るの手伝わん?」
 この忙しいときに! と一瞬思ったが、カタギリ家の満産祝いのおにぎりだというので手伝うことにした。

 このあたりでは出産して1カ月経つと、子供が生まれた家は赤ちゃんのお披露目をかねて「満産祝い」という席を設けることになっている。部落の人みんなを招待してご馳走するのだが、人数が多いので準備が大変だ。出産後1カ月ではまだ体力が戻らず、満産祝をやるのは負担が大きいため、出産後しばらくは奥さんが内地の実家で静養し満産祝いをしない家庭もあるくらいだ。

カタギリ家は商売をしているので、部落を越えてほうぼうに声をかけたのだろう。ノブエさんには赤米のカシキのおにぎりを100個頼んでいた。それをこれから4人で握っていくのだ。

カシキというのはおこわのことである。普通、赤米のカシキは餅米9に対し赤米1を混ぜて炊く。しかしお祝いのときには、気持ち、赤米の割合を多くしておめでたい感じにするそうだ。

用意できた餅米は木の蒸し器に入れ、薪でなん時間もかけて蒸す。一度蒸し上がったものは一回出し、もう一度蒸し器に入れ直して2度蒸しする。そうすると、時間が経ってもご飯が硬くならないという。

赤米のカシキは干立婦人会の十八番で、地元の名産品を持って踊る『イーアール節』では必ず用意する。先日石垣で行われた産業まつりにも出展し、完売している。シンプルな一品だが、赤米をかんだときのプチッとした食感とかめばかむほどおいしさがひろがる味わいがなんともいえず、私の大好物だ。

「そろそろできてきたみたいね」
湯気の上がる蒸し器をのぞき、ノブエさんがいう。大きなしゃもじで蒸し器から取り出したカシキは、350gずつ計り取り、それを2つに分けて握る。形はボールのようなまん丸。内地では三角か俵型をよく見かけるが、こちらでは丸いおにぎりをよく握る。

ノブエさんがせっせと計ったご飯を、ヒロミさんは孫をあやしながら、私とキヨキヨは「手が熱い!」と騒ぎながら結ぶ。握ったおにぎりはゲットウを敷いた籠に載せていく。
「カタギリさんちはゴミを出さないようにしたいから、パックは使わないって」
依頼を受けたノブエさんが説明する。よその家では、持ち帰ったりできるよう使い捨てのパックに詰めることもあるのだろう。ゲットウと籠の方が、雰囲気があっておいしく見えるんだけど。

おにぎりが108個になったところで、納品分は終了。少し残ったご飯は、働いた私たちで分けることになった。やった!

「お汁粉たべましょうね」
 労をねぎらってノブエさんがおやつを出してくれる。赤米だけで作ったお汁粉だ。これをみると赤米が餅米だということがよくわかる。とろってしていて甘さ控えめで、大変おいしい。そのうちぜひ作ってみたい。

夕方、満産祝いの主役、みかんちゃんに会いにカタギリ家に行く。ナリコさんによると、昔は生まれて1カ月ではじめて子供を家の外に出し、「こっちが西、こっちが東」と教え、家の周りを歩いたそうだ。それが満産祝い。お客さんを呼んでご馳走するようになったのは、そんなに前ではないらしい。

昔の満産祝いでは、家の周りを歩いているときに出会った人はその子の“道親”とされた。
「子供が生みの親と“性”が合わないこともあるでしょ。道親は子供の成長の節目節目をずっと見守っていくの。生みの親も道親を大事にして、子供が困っているときにはよろしく、と、いい関係を持つようにしてたのよ」
 なかなかいい習慣ではないか。

カタギリ家には大勢のお客さんが、入れ替わり立ち替わりやってきた。出されたご馳走の数もたいへん多く、カタギリ夫妻の喜びが伝わってくる。

帰り際、
「チナミちゃんも、これ持っていって」
とおみやげを渡された。大きなカステラと、子供の名前が書かれた短冊が入っている。この紙は部屋のどこかに張っておくのだ。地元のスタイルで暮らす家に行くと、お祝いした子供の数だけこの短冊が張られている。うちにもやっと1枚。それはいいが、ご祝儀がちょっと足りなかったのではないかと気がかりだ。


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