昼の練習に2時間半から3時間。夜の合同練習に2時間半から3時間。なにもかも投げだし、踊っているか、寝てるか、食べてるか、という生活をしている。踊りが間に合わなかったらどうしようと思うと、緊張のため便秘になり、夜は疲れすぎてよく眠れない。それでも練習に出ていく。
特訓をはじめてまだ2日めだが、踊りもけっこうおぼえてきた。自分なりに一生懸命やっているつもりだ。しかしナリコさんはいい顔をしない。
「あんまりできないようなら、会歌ダンスに出たら」
という。会歌ダンスというのは、参加するすべての村の婦人たちで踊る簡単なダンスだ。
「そんなにダメですか?」
昨日は練習すればなんとかなりそうだ、といっていたのに。
「全然。ここんとこもできてないし」
と、2番の出だしのところを指摘する。確かにまだ消化しきれていない部分も多いけれど、ここ数日でずいぶんできるようになった振りもあると思うが……。
「けっこうおぼえてきた気がするんだけど……」
と食い下がる私。
「おぼえてはきているけどが、まだまだ」
芸の世界は厳しいなぁ。
ナリコさんの話はこうだった。似たような振りの『目出度節』でもやっていればこちらの踊りにも慣れているけれど、いきなり出るのはどうか。いま、8人で踊ることになっているけれど、7人の方が舞台映えがする、などなど。しかしいまさら、『目出度節』を事前に踊るのが出るための条件だった、といわれてもなぁ。あなたが降りれば7人になってちょうどいい、というのもあんまりだ。
「まあ、直前まで練習しておいて、ダメだったらしょうがない。練習していて損はないから」
慰めにもならないなぐさめをいわれて、午後の練習は終わった。