昼の練習のため、公民館に向かっていると、ナリコさんがバスを待っていた。
「こんにちは。石垣ですか?」
「今日は風が強いから大原まわりだってよ」
薄化粧して、よそ行きの服を着て、お出かけモードだ。
踊りの練習だと気づいたナリコさんは、すかさずいう。
「覚悟しておきなさいよ。出られるかわからんよ」
踊りについていけなければ出さない、といわれ、ついていけるように練習し、成果も上がっているのに、なぜこういうのだろう。ナリコさんがいない間に、もっとうまくなっておかなくては。そう思いながら、
「はいはい」
と受け流し、公民館へ向かう。
公民館の厨房では、おばあたちがミソの仕込みをやっていた。「こんにちは」とあいさつしてホールに入る。今日の練習はひとりだ。好きなだけビデオを巻き戻し、細かく停めて、自分のやりたいように思う存分練習する。振りがかなりできるようになった。ビデオを見ながらだが、曲に乗って踊ることができる。気分がいい。
練習を終えようとしていると、赤ちゃんを抱いたトモコさんがやってきた。
「すごい、形になってるじゃない、チナミさん」
いや、まだ全然ですよ、と返事をするが、おせじとわかってもウチナンチュー(沖縄県出身者)にほめられたのがうれしい。
「毎日、熱心に練習してるもんね」
なんで知っているのだろう。
「ほら、うち、公民館の裏だから、よく聞こえるのよ」
ああ、そうか。
「でも出られるかどうかはまだわからないの」
というと、
「ナリコさんに『チナミさん、どう?』って聞いたら、『うん、なんとかなりそう』っていってたよ」
うれしい。ナリコさん、私には厳しくしているけれど、ちゃんと見てくれてるんだなぁ。疲れ切った体が軽くなるようだった。
ひとのちょっとしたひとことに一喜一憂してしまう。出られるのか出られないのか。決まるのははまだ先の話だが……。