今夜の練習はよかった。村の中の序列というのがやっとわかってきた気がする。
今日はメンバーのうちふたりがお休み。例のごとく「だれか列に入って」ということになり、いつも練習に来ている、地元の人の奥さんである60代のナイチャー女性が「前列真ん中に」と呼ばれた。彼女は私に「チナミちゃんの方が踊れるから入ったら」と勧め、自分はもう一カ所あった後列のあきに入った。私は前列中央なんてとんでもない、と遠慮した。本来は遠慮する性分ではないのだが、ここではそうした方がいいに違いない。するとヒデコさんが「じゃ、私が」といってそのポジションに入って踊った。とても78歳とは思えないしっかりした踊りだった。
このことからわかるのは、地元出身のおばあがいちばんの権力者であるということ。次が地元で生まれ育った女性、その次が地元の人と結婚しているナイチャー。その次がナイチャー同士のカップルだが地元に家を建てて住んでいる人。その中でも年齢が上の方がえらいことになる。私はただの風来坊なので、一番下の階級というか、カースト外というか。
このあと、2回ぐらい踊ると「私は抜ける」といってヒデコさんが列から出た。ほかに残っている人員は私しかいない。すると「チナミちゃん、踊ったら」とやっと声がかかった。ああ、なるほど、と自分のポジションを理解した。みんな意地悪なわけではないのだ。私の思っていた序列が、地元の人たちが考える序列と違っていただけだ。だから最初からみんなと練習してきたにもかかわらず、たまたまぽっかりあいた場所に呼んでもらえないと傷ついていた。しかし、だれも踊る人がいなくても私には声をかけない、ということではなかったのだ。
みんなに合わせながらきちんと踊ったつもりなので、だれからも文句、苦情は出ず、ひと安心。そのあとの休憩で
「ヤマシタさん、油あるよ」
とヒデコおばさん。石鹸を作るための廃油をくれるというのでありがたくもらうことにする。
「お菓子食べなさい」
と重ねていうので、にこっとしながら「はい」といってのど飴をなめた。
ナリコさんは、「草刈りをしたあとグランドゴルフに行ったから今日は疲れた」という話を私にしていたかと思うと、いつの間にか、
「今回はまあ、島々の発表会だから(あなたは出られなかったけど)、自分のためだと思って、しっかり練習しておきなさい。足の運びとかよく見てね。扇の持ち方なんかもまだまだなんだから」
という話になっていた。
はい、そうしますね。
「踊るたびに少しずつ世代交代して、若い人にもどんどん混じってもらうから」
とのこと。なんだかみな気を遣ってくれている。
「踊れる人が出られなくて、踊れない人が出るっていうのもねぇ……」
ナリコさんがそういってたよ、と教えてくれる人がいた。実際、出場メンバーなのにまだ踊りがおぼつかない人もいる。しかし重要なのは踊りのよしあしではないのだ。下克上はありえなかった。