再びパリに戻ってきた。東京に帰るのは明日だ。今日は暑くもなく寒くもなく、よい天気。散歩日和なので十数年ぶりのパリ散策に出かけることにした。
レピュブリック駅近くのホテルから地図を片手に歩き出す。目指すはポンピドゥー・センター。現代美術を扱う美術館だ。
ここは学生時代に1度来たことがある。なにを見たか記憶にないが、
「おもしろかった」
と感じたことだけはおぼえている。今日も大きな展覧会をやっているが、あまりに天気がいいので屋内に入る気が起きず。前庭にごろんと寝ころびひなたぼっこ。そんな人がほかにもたくさんいる。スペースが広いのでポツンポツンとしか見えないが。
「ハーイ!」
背の高い黒人男性が声をかけてきた。
「僕、マリ人の写真家なんだ。マリに来るときは連絡して」
名刺を手渡された。ナンパというより、仕事の売り込みという感じ。ここにはメディア関係の人もよく来るのだろう。それにしても、マリ。遠すぎる。
カフェでお茶をして、再び歩く。
ポンピドゥーまで来たらノートルダムはすぐそばだった。前回来たとき、このお寺のてっぺんからパリを見下ろした。塔の上まで登る石段が狭くて急で、
「観光も若いうちじゃなきゃできないな」
と感じたことを思い出す。
寺院は今日も美しかったが、団体客がうじゃっといたので横目で見るだけにして、セーヌ沿いをお散歩。映画やテレビを通して「これ知ってる」「これも見たことある」という光景が次々目に入る。「これぞパリ!」である。見通しのよい川沿いに中世の建物がたくさん並んでいて、散歩が楽しいエリアのひとつだ。
河川敷でやっているワインとチーズの物産展では日本の梨が「Nashi」という名前で売られている。けっこう人気だ。ワインとチーズ、どちらも好きなだけに、残念ながら足早に立ち去ることにする。私の荷物は今となっては30kgほど。もうなにも増やせない。
川沿いに並ぶ露天画廊を眺めながらポンヌフを渡ると、コイントイレがあった。ガイドブックで知ったこのトイレは一度試してみたかった。このへんでトイレに入っておくか、とドアに近づくと、使用中。出てくるのを待つか?
トイレの周りをうろうろしたが、なかなか空きそうにないので地下の有人トイレへ。入り口にいるおばさんにお金を払って入るやつだ。コイントイレの利用料は0.4ユーロだが、有人トイレは0.41ユーロだった。この値段の差はなんなんだ?
次に向かったのはルーブル美術館。やはり中には入らず、美術館を抜けてチュイルリー公園へ。暖かいので人出が多い。あちこちに置かれているベンチにはほとんど人がいる。カップルでいちゃつく人、ひとり昼寝をする人、本を読む人。読書人口はかなり高い。公園で時間を過ごすのがレクリエーションのひとつとして定着しているのだなぁ。
公園はほれぼれするほど植物の手入れが行き届いている。紅葉しつつある木々はきれいに剪定され、大人っぽい植栽も目を楽しませる。日本の公園だったら赤やオレンジの背の低い花を植え、いかにも作った感じがすることが多いが、ここのお庭には野草のような渋い風合いの草に花を混ぜてあり、野趣を感じる。あたり前だがヨーロッパのガーデニングだ。それがすごくかっこいい。日本の公園の植え込みも、こういうセンスをもっと取り入れてほしいものだ。
チュイルリー公園の先は、シャンゼリゼだ。といっても途中までは緑いっぱいの公園。あれれ? 高級ブティックが並ぶ通りじゃなかったっけ? と思ったら、ちゃんと繁華街に通じていた。
「オーシャンゼリゼ〜♪」
と小さく歌いながらスキップしてみる。楽しいぞ。
そして今日のゴールは、凱旋門! 今日はとっても楽しかった。都会のど真ん中に中世の美しい建物やら緑あふれる公園やらがあり、人々に利用されている。排気ガスが少し気になるけれど、パリってやっぱりすごい街だ。
ホテルまでは地下鉄で。いろいろな人とすれ違い、電車に乗り合わせる。おしゃれな人が多いのがやはりパリだ。東京では「ファッションにお金かけてるな」という人はよく見かけるが、おしゃれだな、と感じる人は案外少ない。パリではそんなに高そうな服でなくても、意外なコーディネートでその人らしさを出している。さすが。私も見習わなくては。