8月13日(金) 「お葬式・その1」 晴れ

ケータイが鳴った。チョータローさんからだ。
「あんた、なにしてる?」
「チョータローさん? 掲示板で見たよ。大変だったね」
 チョータローさんのお母さんが、昨日、亡くなった。享年104歳。老衰だという。

「お昼食べにおいで。人があまりいないから」
 夕方の告別式には行こうと思っていたが、その前でもいいかもしれない。急いで黒いワンピースに着替え、黒のスニーカーで出かける。

今日は朝からよく晴れて、久しぶりに気持ちがいい。天気の悪かった昨日お葬式を出さずにすんで、喪主のチョータローさんもほっとしていることだろう。

家に着くと葬儀の準備の真っ最中だった。玄関には部落のお祝い事でしか使わない旗頭が揚げられている。祖納500年の歴史の中で、お葬式に旗頭が立つのはこれが2度目。100歳を越えて亡くなると、長寿を逆にお祝いするのだ。

車から降り、外にいたチョータローさんに声をかけると、
「こっちこっち」
といって、裏にしつらえた炊き出し用テントに連れて行かれた。
「ここでお昼食べて、加勢してね」
 食事に招かれたのかと思ったら、手伝いに呼ばれたのだった。

 故人にご挨拶をしてからお昼をいただく。餅米で作った大きくまん丸なおにぎりに豆腐とアーサーのおつゆ。おかずは島らっきょうの漬け物だ。非常に島らしいごはんだなぁと感じながら、しみじみ食べる。

テントの下では火葬場に持っていく大皿料理と、遺族が食べるお弁当20個を作っている最中だった。たまたま車に積んでいたエプロンをかけ、さっそく洗い物をする。最初はおつゆのお椀。それから鍋やら箸やらボールやら。コンクリートの上にしゃがみ、ひたすら洗う。横では祖納のお姉さまたちが手際よく揚げ物をしている。

お料理ができあがると、盛りつけだ。お弁当箱を広げ、見本にならってみんなで詰めていく。
「ここ、魚の天ぷら入ってないよ」
「あ、ほんとだ」
 人数が多いと足りないところに気づくのも早い。
「昨日は手伝いが少なくて、どうなることかと思ったけど、間に合いそうでよかった」
 とアキコさん。地元に住む親戚として、ひとり暮らしのチョータローさんの支えとなっている。

 お弁当と前後して盛りつけたのは、霊前に飾る食べ物と焼き場で食べる料理だ。祖納には火葬場があり、亡くなった人は地元で焼いてもらうことができる。村の男たちは夜通し薪の番をしながら火葬場で過ごすのだ。そのとき飲み食いするためのものである。

 料理が一段落すると、少し休憩。クーラーボックスに入っているお茶やビールを取りだし、余った料理をつまむ。天ぷら、タケノコ、カマボコ、三枚肉、フライドチキンなど、いつもの行事料理だが、みんなと食べるとおいしい。
「洗い物ばかりさせてごめんなさいね」
「いえいえ」
 などという会話から、
「あんたどこの人?」
「干立です」
「あら〜、祖納に越してらっしゃいよ。こっちの方が楽しいわよ」
 なんてことにもなり。顔は見たことあるけれど、話したことはなかった人たちとおしゃべりできて、なかなか楽しい。


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