新交通システムMRTに乗り新北投に移動。台北から電車で40分ほどのこの地は、温泉で有名。もとは硫黄の採掘地だったが日本支配の時代に浴場が整備されたという。温泉旅館のほか温泉博物館や地熱谷などもあり、むりやりたとえるならば、草津のイメージに近いか。
電話予約した宿に向かうが、「戦前から続く木造の和風旅館」は単に古くてカビくさいだけ。ほかをあたることにする。手ごろな値段の「熱海」という温泉ホテルに落ち着く。
北投にはラジウムを含んだ強酸性硫黄泉の青温泉と、弱酸性単純泉の白温泉がある。青温泉は名泉中の名泉らしく、足を浸すだけでも疲れがとれるという。温泉宿の多くは白温泉だが、公共の温泉は青温泉、とガイドブックにある。台北市が経営する北投公共露天浴池という露天風呂に行ってみることに。
水着に着替えて外に出ると、階段状に6つ岩風呂があった。温泉は東屋の下にあるいちばん上のお風呂から、2番目、3番目、4番目の岩風呂へと流れ落ちてゆく。そうすることで各浴槽の温度にも変化がついていた。残りの2つは少し離れたところにある水風呂だ。
いちばん上のお風呂がいちばんきれいなお湯なのだが、なにしろ熱い。43〜45℃ぐらいだろうか。ちょっと入るにはいいけれど、ゆったりつかると心臓がバクバクしてくる。2番目のお風呂でじっくり温まり、すいている3番目に移ってのんびりする。下に行くほど垢が目立つが、気にしない気にしない。
ところがこの温泉、ゆっくりできにくい環境にあった。工事中なのだ。あちこちに作業している人がいて、岩にドリルをあてて刻みをつけ滑りにくく書こうしたり、木の板を釘で打ちつけて更衣室のようなものを作っていたりする。端でちょこっと作業、というレベルではない。日本なら休業して客は入れないだろう、という規模の工事なのだ。
温泉につかっていると「ガガガガガ……」とドリルの音。場所によっては粉となった石の破片が飛んでくる。ほかのお風呂に移るために外を歩くときは、滑らないよう気をつける以上に作業の邪魔にならぬよう気をつかう。お客さん30人に対し、作業員15人ぐらい。日本ではありえそうにないこのハーモニー。台湾っぽいんだろうなぁ。
つやつやのお肌になるようお風呂のお湯をなん度も顔にかける。鼻のあたりがぴりっと痛い。日に焼けたのだろう。早く日焼けから回復するよう、さらに温泉で顔をぬぐった。
温泉場には必ず主のような人がいるものだが、ここも例外ではなかった。競泳用水着にスイミングキャップの初老の男性。自転車のチューブみたいなものを持参している。それをベンチの端にくくり、足首を固定。寝そべった姿勢から体を起こし、腹筋、背筋を鍛えている。スポーツクラブみたいだ。
日本人のおばさんグループや台湾人の若いカップル、子供を連れたお父さんや見るからに湯治に来ているおばあさんなどをマンウォッチングしながら1時間。指がしわしわにふやけてきたので出た。着替えて鏡を見たら、びっくり。鼻の周りに赤い穴がポチポチあいている。そういえばここは強酸性硫黄泉。日焼けがぴりっとしみたと思っていたが、小さな傷かなにかだったのだろう。鼻の周りにそばかすみたいな感じで、少しえぐれた赤い穴が広がっていた。あら〜。やりすぎには気をつけないと。