今日の練習は夕方5時半から、本番の会場、白浜で行われる。といっても干立婦人会のではなく、西表エコツーリズム協会チームのだ。
干立の練習時間まで余裕があるので、応援に行ってみまた。私はエコツーリズム協会の賛助会員なので、ぜひ頑張ってもらいたいのだ。
時間に港に行くと、やはり人はほとんど集まっていない。アバウトだからというのもあるが、会員のほとんどはカヌーやダイビングのショップ。選手となるガイドがツアーから戻っていないという事情もあった。
6時過ぎ、私やたまたま通りがかった女の子2人を加え、メンバーを強引に10人集めたところで練習を始めることに。
「オールはさ、ちゃんと場所に合っているかな?」
カヌーガイドのヒデさんが、やや神経質に調べはじめる。サバニの座る位置によって、櫂の柄の長さが違うのだ。
「いいよ、なんだって。早く始めようぜ」
山に詳しいガイドのモリモトさんは、こぎたくてうずうずしている。本番では、どの船、どの櫂が割り当てられるかわからないのだから、というのだ。
「いや、練習のときこそちゃんとやらなきゃ」
まじめな顔で応えるヒデさん。個性派そろいのメンバーで、どこまで息を合わせられるだろうか。
「ゆっくりしたリズムで声をかけた方がよく走るから」
先頭のヒデさんがみんなにアドバイスし、沖に出た。
「ゆいさー、ゆいさー……」
干立婦人会は「よいしょ」になったが、こちらは「ゆいさー」だ。かけ声にもいろいろあっておもしろい。
「回るよ〜」
ヒデさんの声がかかると、船はゆっくり竿を回っていった。距離が長い。まだ半分しかきていないのに、息が上がり、腕が痛い。しかし、ヤコの先の海はきれいだ。透明なブルーグリーンのゼリーの上をこいでいる気分。
港に船がやっと戻った。と思ったら、みんなを乗せたままゆるゆると方向転換し、また沖に向いている。
「……もう1回!?」
と悟った瞬間、
「はい、続けてもう1度行きましょう!」
船頭のキンセーさんがにこやかにいった。
「ゆっくりねー。前の人がこぐリズムに合わせて!」
ヒデさんのアドバイスを合図に、再びこぎ出す。1回目も悪くなかったが、カヌーのプロ集団だけあって、2回目はもっと息が合い、速い。
再び港に戻ったサバニ。さあ、降りようと思ったら、またまた沖に向かって静かに方向転換している。
「え、もう1回!?」
さすがにもう元気がない。
「今日はこのへんにしときましょう」
とキンセーさん。みんなほっとし、全員でサバニを岸に上げた。
6時半過ぎ、干立の練習に行く。
「みなさん、今日は白浜での練習になりますので、車に分乗してください」
カヨコさんからのアナウンスだ。本番の会場と本番用サバニに慣れるためのリハーサルらしい。なんだ、わかっていれば白浜で待機したのに。
「今日は本気は出さなくていいですから。軽く合わせましょう」
白浜に着くとカヨコさんがいった。しかしそうもいかないだろう。こいでいると、どうしても熱くなるから。
1回目。かけ声が速くなり、ヤコがバラバラになりかけた。リズムが速すぎる。それに、干立の海で練習したときより、距離が長く感じられる。
「本番は今日より距離が短いから」
昨日、ヨーシーがいっていた言葉を思い出す。あれは“長い”の間違いだったんじゃないか?
「昨日よりずっといい! 段違い」
しかし港に戻るとタヅコさんが弾んだ声でいった。私自身もこぎ慣れた気がする。練習2日目にしてこれなら、本番はかなりいいセンいきそうだ。
いったん船を下りて、他のチームに練習を譲る。しばらくすると、白浜婦人会がこぎ出した。みんなでじっと観察する。なんだかバラバラで、遅く見える。白浜婦人会はあまり強いチームじゃないらしい。ライバルの祖納婦人会とは行き会わなかった。
最後にもう1回、干立婦人会で練習をした。大きな声を出し合いながら、ゆっくりヤコの動きを合わせる。いい感じだ。もっと大きな声を出す。無心になってこぐ。
「やった!」
とても速かったのが、私にもわかった。今年も勝てそうじゃないか! すがすがしい気分だ。
船から下りたら全身がぐったりしていた。あーしんど。