5月1日(土) 「最後の秘境 奥西表ツアー」 晴れ

 西表島の一部なのに船でしか行けない陸の孤島、船浮。船浮は自然が色濃く残る村だが、過疎化に悩まされてきた。そこで、豊かな自然を観光に結びつけて村おこしをしようと、船浮探訪ツアーが作られた。今日は取材をかね、そのプログラムに参加させてもらう日だ。

白浜から「ちむどんどん号」という屋根つきのボートに乗り、内離島を目指す。“ちむどんどん”とは「胸がどきどきする」という意味だ。客は私を入れて10人ちょっと。6人家族と女の子2人組、あとはひとりで参加している人たち。みな西表ははじめてらしい。

5分ほどで島に着く。以前、キンセーさんのサバニで祖納から行ったときには15分ぐらいかかった。白浜から、しかも馬力のある船だととても近い。

無人島の内離は、昔、炭坑で栄えていた。この島だけで、現在の西表と同じ約2000人が住んでいたという。すごいにぎわいだ。いまでも御嶽などは残っていて、内離から祖納に移住したナイ一族はときどきお参りに行くという。しかし私たちが訪れたエリアは静かなジャングルだった。

歩いていくとすぐに、生け簀があった。「オオウナギ」という看板がある。右手には「リュウキュウイノシシ」。山に沿う形で金網が取りつけられており、岩穴から出てきたイノシシが、私たちを見るとものすごい勢いで駆けていった。西表の生き物を飼って観光客に見せる、と聞いていたのでどんなもんだろうと思っていたが、さほど不自然ではない。

サブローおじいのガイドでトロッコレール、幻の池を見ながら、過酷な労働とマラリアで大勢の人が亡くなった炭坑跡に向かう。とても興味深いので、時間をかけて立て看板を読んだり、じっくり説明を聞きたいが、潮の関係で今日は急がなくてはならないという。このあたりは潮が引くと浅瀬になり、ボートが乗り上げてしまうのだ。住居跡、共同浴場、飲み水タンク跡などをさーっと見て、またボートへ。せっかく山に入っているのだから、鳥や植物の話も聞きたかったが残念だ。また別の機会にしよう。

次は海の中にできた滝壺、水落の滝。両側にマングローブが茂る水路を通ると
「ジャングルクルーズみたい!」
乗船者から大歓声があがった。
「こんなところはほかにないぞ!」
と自慢げにいうのは、ファミリーのお父さん。西表の大自然を子供たちに体験させたい、ということで今日は参加したらしい。

水落の滝はカヌーツアーでなん度か来たことがある。干潮時間には手前で真ヌーを下り、滝壺まで30mぐらい歩く。ドボンと滝壺に入り、ライフジャケットでぷかぷか浮くのがこの上ない喜び! 晴れた日は幸せな気分になる。

しかし今日の船は大きく、参加者もマリンブーツをはいていない。行けるところまで船で行き、遠巻きに滝を眺める。それでもみんな、見慣れない大自然に囲まれ楽しそうだ。はじめての人のこういう感動ぶりを見ると、やっぱり西表の自然はすごいんだなぁと思う。

滝を跡にしたボートは、一路船浮へ。といっても10分ほどのクルーズだ。

 船浮に上陸し、まずトンネルに向かった。そこを越えると、別の世界に来た気がした。バナナの木やがじゅまるなど、私が普段見るものよりはるかに背が高い。静かで鳥が鳴いていて、もうなん十年も時間が止まっている感じだ。

まず訪れたのは旧日本軍の防空壕跡である。太平洋戦争中には、船浮に日本陸軍の施設があった。その名残だ。
「足もとが危ないですから、ライトを持ってください」
2人にひとつライトが配られ、防空壕に入る。トンネルと違い通り抜けできないので奥は真っ暗だ。

こわごわ歩いていくと、
「はい、ここにいるコウモリはイリオモテコキクガシラコウモリといいます」
天井から小さなコウモリがいくつもぶら下がっている。環境省の絶滅危惧種にも指定されている稀少なコウモリだ。みんなで「へー」とか「ほー」などと感心しながら、ライトをあててじっと見る。

琉球真珠の室内養殖場では、黒真珠の成長過程を見学。船浮には琉球真珠という会社の施設があり、黒真珠の養殖がさかんに行われているのだ。なんでも、5万円出せば真珠の種というか核が買え、5年後、育ててもらったマイ真珠が届けられるという。おもしろい企画だ。

さて、待ちに待ったお昼は、地元の食材を生かした豪華ランチ! このツアーを行っている船浮観光には、リカチンという友だちが勤めていた。豪華ランチのことはリカチンから聞いて、楽しみにしていた。

今日の献立はイノシシノチャンプルーにグルクンの唐揚げ、アーサー汁など。青竹をふたつに割った器に盛りつけてある。添えられている赤いハイビスカスもいい。赤米のおにぎりはクバの葉細工のカゴに載っている。こういう演出もすばらしいが、味もGOOOOOOOOD! おいしくてお代わりしてしまった。それにしてもあの食器、ショップで売ったら人気あると思うけど。
 
食後は村を散策。「イリオモテヤマネコ発見の地」の碑を発見。ここではじめて見つかったとは。飼われているヤシガニやハブを見学(?)し、最後は楽園・イダの浜へ。ここは本当に美しいビーチで、自然の不思議を伝えるNHKの番組で、ウミチョウブの撮影をした場所だ。私たち一行は、泳いだり、昼寝したり、散歩したり。思い思いに午後を過ごす。

「よかったらどうぞ」
サブローおじいが取り出したのは、泡盛の一升瓶。いつ持ってきたのか、三線まで弾いてくれる。のどかな昼下がりだ。
 
ツアーの帰り、白浜から車に乗ろうとしたら、バッテリーが上がっていた。トンネルが原因らしい。白浜の手前にあるトンネルでつけたライトを、消し忘れる人が多い。今日は私がやってしまった。どうしよう、バッテリーが……とあわてていると、ちむどんどん号の操縦者、タナカさんは
「よくあることよ」
と慰めてくれた。いい人だ。

観光バスで送ってもらい、三好さんとイチローさんに来てもらう。バッテリーをつないでエンジンをふかしてもらう。私の車のエンジンがかかった!
「ちょっと充電したほうがいいな」
と三好さん。
「どうやるの?」
と聞いたら、
「どっか行って遊んでこい!」
 それなら得意です!


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