5月13日(木) 「師匠」 晴れ

島にずっといると、煮詰まることもある。昨日のことだ。東京と行ったり来たりのビジター生活では、決して体験できない閉塞感だった。

どうやって気分転換しよう?

友だちの顔を思い浮かべたが、島の人と話しても気分は変わらないだろう。それに内地の友だちはまだ忙しく残業している時間だ。島で飲みに行っても知った顔ばかりだし、石垣に行く船はすでに終わっている。せめてひとりカラオケで熱唱したり、コンビニでお菓子を買ったり、雑誌を立ち読みしたい。でも、もちろんそれは叶わぬ夢。やりきれなくて、息がつまりそうだった。

今朝、外で三好さんの髪を切ってあげながら、そんな話をした。
「自然の中に入りなさい」
三好さんはきっぱりいう。
「キミのいってることは、まだまだ人間の欲の世界じゃないか。コンビニとかカラオケとか、ゼニカネの世界でしょ。自然の中に入るとおもしろいぞ」
三好さんには釣りがある。天気さえ悪くなければ、夜中に船を出し、大海原で過ごすことができる。

「僕はネコから学んでいるよ。自由気まま。人に気を遣わない。そうやって生きられたらいいよなぁ」
気楽な独身だし、かわいいネコはいるし、好きな釣りには行けるし。いまお金があっても使い方がわからないという。
「これで酒さえコントロールできたら、理想的な状態なんやけど」
 たまに体をこわすまで飲み過ぎるのが、やっかいだ。

西表に通い出したときは、外離のナガサキさんを師匠だと思っていた。しかしいまでは、ダメなくせに実は生き方に哲学がある、この三好さんが師匠かもしれないと思っている。床屋さんをやりながら、そんな勘違いをした朝のひととき。


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