5月24日(月) 晴れ
なんだか無性に泳ぎたくなって、あけぼの館前の海に入る。ここはとってもサンゴがきれい。魚もいっぱいいる。夢中で泳いでいると、「不思議だなぁ」と思う。イソギンチャクも、色鮮やかな魚も、サンゴもみんな生き物なのだ。スズランテープがひらひらしたり、プラスチックの魚がうろうろしているわけじゃない。固くて動かないサンゴだって、呼吸をしている。
島の暮らしも慣れてみると、生活に追われる日々。なんだかんだと忙しく、海なんてほとんど行かない。でもちょっと泳いだだけで、身も心もずいぶん軽くなった。今年はいっぱい泳ぎたいな〜。
5月25日(火) 晴れ
夕方から4時間ホテルのチューボーのバイト。お金に困っているわけではない(貧乏だが)。修学旅行生が100人泊まり、人手が足りないというので助っ人だ。料理人が2人とヘルパーが私を入れて6人。パートのおばさんが2人。みんなきびきびと動く気持ちのよい職場。働いていて楽しい。
しかし体力なくて、2時間で疲れる。食器洗い機から出てくるお皿を待つ隙に、こまめにしゃがんで体力温存。ああ、なさけない。でもまた働きたい。賄いがおいしいんだもん。
5月26日(水) くもりときどき雨
石垣に行くついでに、三好さんのお見舞いに行く。
「ああ、来てくれたの」
6人部屋の窓際のベッドで、三好さんは週刊誌を読んでいた。腕には点滴が刺さっている。
「24時間これなんだよ」
そんなに嫌でもなさそうだ。庭で採れたトマトを差し入れする。メゾン三吉の香りがしたらいいかな、と思って。
「元気そうじゃない?」
家を出るときはあんなにげっそりしていたのに。
「今日から大部屋に移ってね。昨日まで個室だったよ。肺結核じゃないかと疑われてたから」
えっ! 私、三好さんの血痰が溜まってた蚊取り線香の缶、捨てにいったのに。やばいじゃん!
「いや、大丈夫だよ。結核じゃなかったから」
三好さんの肺には穴があいていた。原因はよくわからない。そしてアルコール性肝炎も煩っている。これは飲み過ぎだろう。
「医者に『もう退院させてくれ』っていったら、『この際しっかり治しておいた方がいいですよ。サインするものがあれば、僕が書きますから』って」
しんみりとうれしそうだ。
「みんな心配してるんだから、お酒やめないと」
「ああ、死ぬからな」
本心からいっているようだが、こういう会話ははじめてではない。倒れるまで飲んで、いっときやめる。でもまた飲み出して倒れるまで飲む。小さな波もあるが、だいたい1年ぐらいのスパンでそれを繰り返している。
「役場に行って、保険証、作ってきてくれないか」
三好さんは去年1年間国保の保険料を払っていない。滞納分の支払いをして、保険証を作り、それを持ってきてほしいという。でないと退院するとき大変な金額を請求されるに違いない。
「いいよ。でも、戻って来るの大変だから、明日でもいい? 明日また石垣に用事があるから」
うんうん、と頷きながら、三好さんは小さな手帳を開いて見せてきた。
「ちゃんと書いてあるよ、ほら」
入院日記をつけているらしい。5月22日のところに、「山下チナミさんにいろいろやってもらって感謝」と書いてある。えらい。今日の分もちゃんと書いといてね。
「ありがたいなぁ。ほんとにありがたい」
そういって、慣れた手つきで点滴をガラガラ押しながら、エレベーターの前まで見送ってくれた。
「じゃ、明日ね」
「よろしく」
(続く)