その場所はチクラヤンといった。干立の昔の水源だ。
干立のゴミ捨て場の裏には与那田川が流れている。潮はすっかり引き、マングローブの根や土が見えている。数人の若者でそこをわたり、森の中をずんずん歩いていくと、草の生えた広場に出た。
なん人かで草刈りしていると、
「後は任せた」
といって、タケくんが奥に向かって歩き出す。私もついていく。
その先にある四角い大きな石ガメには、水が満々とたたえられていた。高さは男性の背丈ぐらい。縦4m、横2mほどだろうか。1956年に設置された水道である、と横に由来が刻まれている。カメの上の方には小さなパイプが刺さっていて、直径3cmぐらいの穴から水が流れ出ている。
「うわ、甘い」
水を飲んだナガサワさんが声を上げた。どれどれ。確かに、にまろやかに甘い。ちょっと休んでからあたりの草を刈り、さらに先へと進むことにする。
次に見つけたのは、またもや石ガメ。ただし、さっきのほど大きくはない。
「三好さんちも3年ぐらい前まで、この水使ってたんだよ。いまは水道水だけど」
メゾン三吉に3年ぐらい前まで住んでいた、コバヤシさんがいう。
「こっちの方がいいじゃない」
とタケくん。私もそう思う。
「でも、雨のあととか濁るよ」
そうか。それは嫌だな。
この石ガメの先には小さな池があった。やや濁っている。ここからすぐ下の石ガメに水が行き、そこからさらに下の大きな石ガメに流れ、そこから集落の各家に水が行き渡っていたのだ。いまでは水道水を使う家がほとんどだが、畑などにはまだ、この水が使われているという。
帰り道、前を歩く男の子たちが消えたと思ったら、
「こっちにシークワーサーがあるって」
横道にそれて、シークワーサーを採っている。
「まだ熟してないな」
なんていってるわりには、ポケットが膨らんでいるのはなぜだろう。
公民館に帰ると、カップラーメンが待っていた。私は基本的にカップラーメンは食べない主義なのだが、今日はとってもおいしそうな気がする。
「三好さん、具合はどんなか?」
元学校の教頭だったムカイさんが声をかけてくる。これでなん人目だろう。今日、三好さんの様子を聞いてきたのは。
「もう、かなり元気ですよ。退院も間もなくじゃないかな」
「あんたがお酒、飲ませたんじゃないか? 嫌がる三好さんを」
笑いながらムカイさんがいう。ははは。おもしろいですね、それ。
「これ、作っとけ」
ムカイさんはカップラーメンを私に託し、トイレに向かっていった。こういう甘え方をされるのも、嫌いではない。
去年はあんなに気が重かった部落作業である。しかし今年は部落への自分のとけ込みが感じられて、思いのほか有意義なのだった。