和やかムードのレースから雰囲気が一転したのは、午後。お昼ご飯を食べ会場に戻ってみると、警備が増えている。道路にも人の横断を制限するロープやコーンが置かれ、厳戒態勢一歩手前という感じだ。
午後はトライアスロン・ワールドカップ石垣島大会だった。シーズンの幕開けとなるジャパンカップ第1戦でもある。参加は約20名の世界のトップアスリートたち。トライアスロンなんて見たこともやったこともなかったが、思いがけずハイレベルな試合が見られることに、わくわくしてくる。
午前中は男女一組のDJが日本語で会場を盛り上げていた。参加者のほのぼのエピソードなどを交えたしゃべりは、昼間のラジオ番を聞いているようだった。しかし午後はリズミカルな英語のDJに変わっている。それだけでも引き締まった感じだが、今年のアテネオリンピックの選考にも影響を与えるレースだ。会場にはぴりぴりした緊張感がただよっていた。
最初は女子、次に男子のレースが行われたが、どちらもおもしろかったのは、バイク。市民大会と違い、ワールドカップではゲートを出てすぐ、サザンゲートブリッジを登る。上りがきついうえに風も強いこのエリア、通過する女子選手の先頭グループは、
「ハーハーハーハー……」
とはっきりと聞き取れる苦しげな息づかいで登ってくる。
「Let’s GO GO GO GO!」
と大きな声で自分を励ましながら、集団全体にはっぱをかける選手もいる。孤独なレースを闘いぬくためには、自分で自分を盛り上げることも必要なのだろう。
実力がせめぎ合っていた男子のレースからは、もっと強い殺気が感じられた。30〜40人の大きなトップ集団が、コースを一気に駆け抜ける。ドドドドドドドドド……と音をさせ、バッファローの一群が通り過ぎるようだ。見ているだけでも、ちょっと怖い。やってる方はもっと怖いのではないか。でも怖かったらやれないか。
トップがいれば、ビリもいる。男子も女子もダントツに遅れてしまった選手がいた。ひとりでレースを走っている雰囲気だ。
「頑張れー!」
沿道はそんな選手を特に応援するが、本人は悔しいだろう。ワールドカップに出るくらいだから、国内ではトップレベルのはず。今日はたまたま体調を崩しているだけかもしれない。しかし世界のトップだけで試合をすると、ビリになってしまう。勝負の世界って厳しいよなー、と感慨にふけるのだった。
夕方、美容院に行く。東京でいつもカットしてもらっていた美容師さんの先輩が、石垣で美容院をやっている。そこにチャレンジするのだ。私の髪を切りながら、石垣出身のオーナー美容師は、こう教えてくれた。
「トライアスロン大会、もうやめようかって話が出てるんですよ。市の財政が厳しいから。代わりにプロ野球のキャンプを誘致したらどうだろう、って。でも僕は、せっかく根づいた大会だし、国内選手はもちろん海外選手もキャンプを張ってくれるから、このまま続けた方がいいと思うんだけどなぁ」
野球チームのキャンプ地には、はやりすたれがあるらしい。最近、沖縄でキャンプをするチームが増えているが、かつて人気だった宮崎や高知は厳しい状態にあると、なにかに書いてあった。いつまで来てくれるかわからないプロ野球のキャンプ地より、「トライアスロン・ワールドカップ開幕戦の地」というポジションを大事にした方が、私もいいと思うけどなぁ。