4月18日(日) 「石けんワークショップ」 晴れ

 毎月第三日曜は西表エコツーリズム協会のフリーマーケット。家庭でいらなくなったモノを持ち寄る不要品再生市場が開催される。西表の植物でカゴを編む、ゲットウで紙すきをやるなど、毎回、お楽しみイベントが行われるのだが、今日はなんと、私とフーミンが講師となり廃油石けんのワークショップだ。

 会場に着くと、すでに10人ぐらい人がいた。雑貨や衣類、本、家具などが並べられ、なかなかにぎやかだ。ワークショップまで時間があるので、私も物色する。モリモトさんちで採れたトマトは5コ50円。これは買い。新品のTシャツも1枚500円。色がきれいでほしいけど、Tシャツってうちにも売るほどあるしなぁ。

 品物を一通り見ると、どうしても引かれるものがあった。西表では明らかに実用的ではないのが、気づくとそちらに目が行っている。ビーズの飾りがついた華奢なピンクのサンダルだ。
「はいてみたら?」
 靴を手にしたまま考え込んでいる私に、ノブちゃんが声をかける。
「ぴったりなんだけど、はいていくとこないじゃない、これ」
 と私。
「キンセーさんちの田んぼではけば?」
 明らかに、からかわれている。
「とっても似合ってるよ。それがはけるのは、トキワさんかチナミさんかって感じじゃない?」
 トキワさんというのは、いつもきちんとお化粧をしている、服装がやや派手な女性だ。

 さんざん迷ったが、新品で200円だったので買うことにした。それにしてもこのサンダル、なんでこの島にあるんだろう。

 そうしているうちに時間になった。ワークショップを始めることにする。参加者は西表自然学校のヘルパー3人と、ウナリザキ荘のオーナー、オオシマさん。ヘルパーさんたちはまだ若い女の子2人と男の子。オオシマさんは妙齢の女性である。

2月からフーミンと私は廃油を集めて石けんを作るうち、おもしろさに目覚めてしまった。その日の気温、湿度、油の状態により、同じ分量で同じように作ってもでき方が違う。なにより、使えなくなった油で生活必需品の石けんができるのが楽しいのだ。
「もっとみんな、作って使えばいいのにね」
 ノブちゃんにそんな話をしていたら、
「今度のフリーマーケットでやらない?」
 と提案された。そこで、今日のワークショップになったのだ。

みんなどれくらい興味を持ってくれるだろうか?と心配だったが、参加者はメモを取りながら熱心に聞いてくれる。
「作り方自体は簡単なんですよ。バケツにカセイソーダを入れて水を注ぎ、溶けたら油を入れて混ぜるだけ。水の代わりにゲットウなどのハーブを煮出した汁を使えば、廃油の臭いも気にならないですよ」

木陰に用意したバケツの前で説明しながら、作業は参加者にやってもらう。「わー、油の色が変わってきた!」
順番にかき混ぜながら、声を上げている。
「なんかちょっともったりしてきましたよ!」

 字が書けるぐらいの硬さになるまでかき混ぜ、牛乳パックに流し込む。
「台風のときのアクティビティにいいかもしれない。やることないから」
 とオオシマさん。彼女の宿はダイビングサービスをやっている。雨でも潜れるが台風だとお手上げだろう。石けん作りは室内でもできるから、西表のハーブ入りの手作り石けんをおみやげにできたら、喜ばれるかもしれない。

 牛乳パックに流し込み、30分ぐらいしたら固まってきた。
「ああ、もうできかけてますねぇ」
「パックから出して切り分けるのは、明日以降、固まり具合をみてやってください」
 フーミンが説明する。そのあと4週間ぐらい乾かしたら、お肌にも地球にもやさしい石けんのできあがりだ。

「材料がまだあるなら、もう1回やりたいわ」
という熱心なオオシマさんのリクエストにより、お昼ご飯のあと、もう1セッションやることにした。現れたのは、オオシマさんのところの若い衆5人。全員女の子だ。
「へー、おもしろい」
といいながら、ガシガシかき混ぜて、完成。彼女たちの力で、ウナリザキ荘でも廃油石けんカルチャーが根づくといいのだが。

ワークショップの片づけをしていると、フーミンがいった。
「マンタピアで石けん売りませんか?」
毎年5月に鳩間島まで往復するカヌーレース、マンタピアが行われる。今年は第三日曜に当たるので、応援のお客さんが退屈しないようにとフリーマーケットが港で行われることになっていた。

これまで、私たちが作った石けんは島の雑貨屋さんに卸してきた。中に入れるハーブもお店から決められたものだった。「自分たち独自の形、フレーバー、包装の石けんを作り、安く売りたね」という願いは前々からあるのだが、それを実現するいいチャンスかもしれない。

夕方、家に戻る途中、チョータローおじさんから電話がかかってくる。
「いまなにしてる? 公民館の手前のノブあんちゃんちで飲んでるからおいで」
 せっかくのお誘いなので、行くことに。

 ノブあんちゃんちのお庭では、チョータローさん、ノブあんちゃん、マサさんの息子さんがすでにできあがっていた。私もビールをご馳走になる。つまみはカツオの刺身、イノシシの刺身、アンダースーなど、ずいぶん豪華だ。

「あとで釣りに行って、夜中の1時から魚売りに行くか?」
チョータローさんが話しかけてくる。しかし同時にマサさんの息子も話しかけてくる。
「うちのかーちゃんはイバラギ出身だからイバってんの」
ノブあんちゃんは母屋から新たなつまみを持ち出しては勧めている。
「ほら、これもおいしいど」
 みんな人の話を聞かず、自分のことだけしゃべる。音楽のアンサンブルを聞いているようだ。

「おふくろはよ、歩けないけど頭はしっかりしてるよ。だれが見舞いに来てるか、ちゃーんとわかってる。まだ死なない」
ろれつの回らない口でマサさんの息子がいう。退院したら入れるように、老人ホームの順番待ちもしているそうだ。もう生きて会えないかもしれない、と思い詰めていたカネコさんが聞いたら、喜ぶだろう。
 
 石けんに始まり飲みで終わる、盛りだくさんな1日だった。


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