もろもろの用事を済ませるために、石垣に出た。メインは八重山育成園という作業所の廃油石けん作り見学だ。数日前、マサコさんに相談し玉砕した廃油石けんプロジェクトだが、どこかまだあきらめ切れなかった。やり尽くした感じがしないのだ。
3月末、東京に帰ったとき、リサイクル石けん協会の研修会に行った。協会ではドイツ製のザイフェ(ドイツ語で「石けん」という意味)という機械を使った廃油固形、粉石けん作りを奨励していて、全国の自治体、作業所ですでに350台使われている。西表で廃油石けん作りをするなら、ザイフェを使った粉石けんがいいのではないかと、なんとなく思っていた。
近くの廃油石けん工場を見学したいと思っていたが、石垣にあることが判明。「見学歓迎」とのことなので、さっそく電話でお願いし、フーミンとふたりで訪ねてゆく。廃油は気温、湿度、油の状態でプロセスにかかる時間が変わる。似たような気候の工場の話なら、参考になると思うのだ。
八重山育成園の石けんは、「美ら島せっけん」というブランドだ。固形石けんは私も使っているが、なかなか泡立ちもよく、使い勝手がいい。油の臭いもしない。粉石けんは使っていないが、たぶん同じようにすぐれているのではないかと勝手に想像していた。
八重山園を訪ねると、ミヤギ園長が出迎えてくれた。さっそく粉石けん作りにかかる。油30リットルを火にかけ、水で溶かしたカセイソーダ5.5kgを混ぜていく。私たちがやろうとしているプロジェクトを話すと、ミヤギさんはすぐに賛成してくれた。
「ぜひやったらいいですよ。でもこっちの人は環境がよすぎるから、感心ないんだよなぁ」
水俣などの公害の街では、ずいぶん大がかりなビジネスとして展開しているという。美ら島せっけんは8年前からやっているが、思ったほどには売れていないらしい。
ここで作っているのは、固形石けん、プリン石けん、粉石けんの3種類。
ホームセンターのマイクマン、24時間営業のスーパー・マックスバリュー、市役所の売店、病院などに置いてもらっているが、粉石けんがいちばん人気がある。
「作ったものは長く置いておくほどいい石けんになります。廃油臭さ? 日にちがたつと白くなるし、臭いも飛びますよ。いま使ってくれているのは、そういうことが気にならない人たちですね」
そして、このあと、思わぬ収穫があった。
「西表には、大原に作業所があるでしょ? あそこに持ちかけて一緒に石けんやったら? 粉石けんを焚く機械は作業所から申請を出してもらえば、企業の基金とかで買ってもらえますよ」
育成園の機械もそうして導入されたものだ。育成園では車も体育館も、その他、高価な機械はほとんど、企業の基金や寄付で手に入れたものらしい。
「石垣は地理的に恵まれないから、支援が受けやすいみたいですね。西表なんて、もっと離島さから助けてもらえるんじゃないかな」
ミヤギさんが電話をしておいてくれるというので、そのうち作業所を訪ることにした。
もし西表の作業所で機械を導入してもらえるのなら、最初は廃油石けんに理解のある人だけが使うのでも採算は合うんじゃないか? そして品物のよさを口コミで広げてもらえば、少しずつ廃油石けんの利用率が上がるんじゃないか。そうしたら島の環境も、このままの状態より保たれるだろう。そう思うと、頭の上でくもっていた空が、急に晴れていく気がする。
しかしその晴れ間も、長くは続かないのだった……。(続く)