4月29日(金) 「パナリへGO!」 晴れ

あけぼの館のお客さんたち5人とパナリ(アラグスク)に行くことになった。訪れるのはこれで2度目、7カ月ぶりだ。

パナリは上地と下地の2つの島に分かれている。上地の人口は現在数名。下地は牧場があるだけで、住人は2人。牧場の管理人が住んでいるだけだ。周囲の海が美しいので小浜のリゾートホテルから日帰り、あるいは1泊のツアーが出ているが、定期船はない。自分で船を持たない場合はチャーターし、大原から出港するのが一般的だ。

私を誘ってくれた人には特別なツテがあるようで、パナリに郵便物を運ぶ船に安く乗せてもらうことができた。昨年秋に行ったときは波が高く、着くまでの15分ほどの間に、行きも帰りもびしょぬれになった。しかし今日はベタナギ。すいすいと船が進んでいく。

「気持ちいいね」
「いいねぇ」
 青い海に囲まれ、風に吹かれてクルージングを楽しんでいると、石垣からの定期船が大原港に向かっていった。
「来るぞ、来るぞ、来るぞ」
 と思っていると、定期船の曳き波が、ぼわん、ぼわん、ぼわん……とゆっくりこちらに寄せて来る。

「うわぁ、来る来る!」
 10人乗りの船にいる私たちには、襲ってくる波を見ながら、心の準備をするしかない。
「うわっ」
 曳き波が船に到達した瞬間、バッサーンと大きな波に襲われた。舳先にいる私ともうひとりの男の子が、もろに水をかぶる。
「やられたぁ〜」
 みんな笑っている。他人事だと思ってからに。

 上地に着いた。村を少し探索する。島は時間が止まったかのように静かで、懐かしい感じ。サンゴの石垣に囲まれた平屋のおうちは戸がすべて開け放たれ、風がよく通る構造になっている。中は丸見えだが、過ごしやすそう。通りにも芝が生えていて、散歩するのも気持ちいい。

「いいなぁ、こんなところにしばらくいられたらなぁ」
 誰かがふといった。お店もない、自動販売機もない。それどころか住んでいる人さえほとんどいない。浮世離れしたこの島にしばらく滞在したら、命の洗濯になるだろう。島には宿が1件ある。今度泊まりに来たいな。

お弁当を食べたあとは、シュノーケリング。新しく買ったデジカメとハウジングを使ってみるのだ。数日前の強風の影響か、水は濁っている。港のすぐそばにサンゴはあったが、茶色っぽい地味なやつばかりで、いまいち期待はずれ。これならあけぼの館裏の方が色とりどりできれいだ。

あとで郵便船の人に聞くと、上地と下地の間にすばらしい珊瑚礁があるという。
「干潮のときには真ん中に干潟ができるから。そこを拠点にのサンゴを見たらいいよ」
 次回はぜひ、そうしよう。

帰りに下地に寄ると、港のあたりにビーチパラソルがいくつか立っていた。
「海水浴客向けに、牧場経営者がやっているんですよ。夏になると70ぐらい、この浜にありますよ」
と、郵便船のおじさんが教えてくれる。

牧場に向かう途中に見た黒いビニールを敷いたプールは、貯水池だった。もう使われていないが、かつてアメリカが作ったものらしい。ちなみに現在は西表から地下水道で水が運ばれている。西表の水源はそれだけ豊富なのだ。

ここは現在、牧場だけだが、以前は多くの人が住んでいたという。
「だんだん人が減ってね、最後は大人が40人、子供は20人ほど。昭和29年に廃校になって、30年後に記念碑を建てたんですよ、ほら」
そんなに時間が経ってから、廃校記念の石碑を建てるなんて、珍しいんじゃないか。

廃校になったあと、住民が石垣などに渡っていき、廃村になった。1坪3セントで売りに出た土地を、現在の牧場経営者が買ったらしい。
「当時は石垣―大原間の船賃が50セント。薪1つが3セント。土地と薪の値段が同じだったんですよ」
 のどかな牧場の片隅に、歴史の片鱗をかいま見た。


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