今年の民俗芸能発表会は、竹富町内の各島から11の団体が参加。各地で保存・継承されている芸能を披露することになっていた。
この日私は、竹富町に伝わる民俗芸能の奥行きの深さを知ることになる。
14の演目はどれもすばらしかった。芸能のレベルの高さで有名な竹富の古謡、狂言はもちろんよかったが、絢爛豪華な髪飾りが美しい鳩間の『鳩間中盛』、軽やかな鳴り物と衣装のバリエーションが豊かな古見の『古見の浦節』も新しい発見だった。
しかしいちばん盛り上がったのは、黒島の『初番』。黒島の東筋村の結願祭で最初に演じられる奉納舞踊である。「1年間五穀豊穣がもたらされたら、来年の結願祭には歌、三味線、踊り、狂言などを奉納しますよ」と祈願。その年はこれまでにない大豊作だったので、村の若い男女を引き連れ、約束通り芸能を奉納した……という結願祭のいわれを描いた演目だ。
なにがよかったのかといえば、踊り手の初々しさである。人口300人といわれる島の若者約30人が舞台に登場する。ソロで、もしくは夫婦という設定の男女2人、あるいは4人グループでさまざまな踊りを披露していくのだが、みなこの発表会のためにはじめて練習して踊った、という雰囲気だ。決してイタについてはいないが、楽しそうに一生懸命踊っているのがいい。
特に男性は足の左右のステップを間違えたたらをふみ、笑いを誘っている。「頑張れ!」
という手拍子を巻き起こしたり、
「ヤササッ……」
と会場からかけ声をもらったりする。また魚を捕るしぐさをすれば
「大漁!」
と声までかかる。ゆったりとしたテンポの踊りを熟練の芸達者が披露しまじめに見るという演目が多い中、『初番』はエンターテイメントな要素が高いのであった。
とはいえ私がこの日いちばん感動したのは、ほかにある。トリの演目となった新城(アラグスク)の古謡、『「節祭」ウプヌピーダー』だ。
太鼓の低い音が小刻みに鳴り響く中、櫂を持った漁師、イモのつるを持った農民などに扮した男女が、50人ぐらい、歌を歌い手をつないで入ってくる。それだけでもほかの芸能とはまったく違い、これから特別なことが起きそうな予感をさせる。
老若男女はそのまま舞台の上でなん重もの輪になり、つないだ手を前後に振りながら、まわっていく。低くくぐもった男女の歌声が、サビにさしかかると甲高いかけ声に変わる。
「サーア、エイサッサ!」
アフリカの原住民に伝わる素朴な土着の音楽。そんなものをふと思わせる、魂を揺さぶる原始的なサウンドだ。
新城には現在、数名しか住民がいない。舞台いっぱいに踊り歌っている人たちは石垣などに住む新城出身の人たちである。島を離れていても新城魂は失わないのだ。そう訴えているようだ。
歌詞を変え、短い曲が29番まで続く。単純な曲、単純な踊りの繰り返しの中に、歴史と故郷を思う情熱がある。この演目が披露されるのはお祭りのときだろう。長い間秘密裏に行われてきた新城の祭りに、今年はぜひ行ってみたい。
参考資料:『第3回 竹富町民俗芸能発表会 プログラム』(竹富町民俗芸能連合保存会刊)