2月1日(日) 「西表横断・その1」 晴れ

2月からのシーズンを前に、西表横断道の整備に行くという話を聞きつけた。ゴミを拾い、道しるべが適切な場所に残っているか確認するため、実際に歩いてみるのだ。横断は前からチャレンジしたかったことのひとつ。ヒルやハブが少なく、気候のよいいまが、横断にはベストシーズン。ぜひこの機会に行っておきたかった。

しかし、やる気と同じぐらい不安もある。体力のない私に横断なんてできるのか? 今回歩くのは浦内川の軍艦石から大富口までの11.4km。そんな距離を1日で歩いたことはない。山慣れた人たちの足手まといにならないか? 私のせいで日没までに出てこられなかったらどうしよう? それより、置いて行かれたりして!?

しかも横断経験者によって、いうことが違った。
「アップダウンはそれほどなくて、ダラダラ道が延々と続くの。だから小学校の修学旅行で行くワケよ」
と地元の人がいえば、
「距離は大したことないんだけど、アップダウンがすごい。けっこう大変だよ」
 と怖いことをいう友人。どっちが本当なのだろう?

「ダラダラ道が続くというのが正しいね。アップダウンなんかないですよ。沢づたいに歩けば迷わないし」
 エコツーリズム協会のイタニさんがいうのを聞いて、少しホッとする。
「横断ははじめてなの? じゃ、山下さんを先頭に歩くことにしよう。」
 な、なぜですか? ハブよけとか?
「まったく山に入ったことのない人が、どこで迷いそうになるか後ろで観察させてもらおうと思って」
一種のモルモットだ。まあ、山のベテランと行くわけだから、私のせいで遭難ということもないだろう。

 日に日に緊張が高まり、昨夜は不安でよく眠れなかった。しかし目覚めの気分は悪くない。少しくもってはいるが天気も上々だ。

集合時間の8時半に浦内橋に行くと、他のメンバーはほとんど集まっていた。イタニさん、東海大学のナカザトさん、森林管理署のカシマさん、琉球大学のケイコさん、カヌーガイドのカワバタっちとカヌーショップのヘルパー男女2人。西表の山のエキスパートたちである。ハブに噛まれないようみな長靴をはいている。

迷ったが私はトレッキングシューズにしていた。長靴だとハブ対策はできるが歩きにくい。ただでさえ歩き通せるか心配なので、疲れない方がよいと思った。それに、根拠はないが今日ハブは出ない気がした。

浦内橋から観光船に乗り、軍艦石へ。午前9時12分、いよいよ出発だ。歩きはじめてすぐ、ふわふわした羽のついたサカキカズラを発見。エゴノキの白い花も咲いていて、いい香りがする。鳥のさえずりを聞きながら、木漏れ日の中を足早に行く。カンピレーまでは「ハイヒールでも行ける」といわれる程度のハイキングコース。元気なうちに少しでも距離を稼ごうと気持ちが急く。土のにおいや草や花の香り、木々のざわめき、遠くに聞こえる滝の音。風が気持ちいい。

浦内川展望台で少し休憩し、カンピレーの滝へ。岩場ではクルックルッとカエルが鳴いている。いつもなら「着いた!」と達成感でいっぱいになるのだが、横断道の出発点でもあるここが今日のスタート。全行程からすると5分の1も行っていない。安心できない。というより、登山口がどこにあるか、すでに見つけられないでいた。

「このまままっすぐ、川沿いに行きましょう」
途方に暮れる私を見かね、すぐ後ろを歩くイタニさんがアドバイス。大ウナギを横目に、川沿いの岩場を歩く。
「おばあさんみたいだなぁ」
滑らないよう腰を落とし、ガニマタへっぴり腰で歩く様子に、イタニさんが笑っている。

横断道の入り口、カンピレー口で後のメンバーを待っていたら、ケイコさんが片足ずぶぬれになって現れた。滑ってコケたのだろう。笑われてもおばあスタイルで歩くことにしようと決意する。


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