昨日から“日曜野菜市”という看板が気になっていた。久部良と祖納を結ぶ道沿いにあるのだ。さっそく行ってみようと、県道から細い道に入り、なん度か曲がる。迷ったかなぁと不安になったころ、大きな看板に出くわした。
「天然有機肥料栽培 仲嶽農園」
ここだ!
ビニールハウスの横、大きな木の下に並べられたテーブルには、ニラ、シマナー、なにかわからない菜っぱ、ゴーヤ、島バナナなどが置かれている。しかも安い。島バナナは1kg500円、ゴーヤは4本150円だ。よーく見るとそのうちのひとつが、最近、気になるあの野菜みたいだ。
「ハニンニクっていうんですよ、それ」
やっぱり! 西表の無人販売所でやたらニンニク臭いニラを買ったら、ハニンニクだった。ネットで調べると、「麻婆豆腐には欠かせない」とか「最近人気上昇中の食材」とあり、また食べたいと思っていたのだ。
「これ、どうやって料理するの?」
恰幅のいい売り手のネーネーが教えてくれる。
「香草(コリアンダー)やシーチキンと和え物にしたり、すき焼きに入れてもおいしい。冬はこれ、いっぱい食べているとカゼ引かないの。うちでは食卓に欠かさないですよ」
帰るまで保つよう、その場で切って軽く塩をふり、ビニールに入れて塩もみにしてもらう。少しつまむ。うわっ、ニンニクって感じだ。元気が出そう。
テーブルの横では、経営者のおじい、ナカタケさんと息子のツヨシさんが、地面に座って葉っぱをより分けていた。無農薬栽培なので、虫がよくつくのだ。
島とうがらしを水でといたもので虫除けをしているが、完璧には防ぎきれない。虫食いの作物は見栄えが悪く、特に若い人は買いたがらない。食われてないところだけを選って売り、虫食い葉は家族で食べるという。
「内地から来て島に住んでいる人が、喜んで買っていきますよ。毎週日曜日にここに来て、おかしをもらうのが楽しみ、って子供もいるしね。でも与那国の人は意識が低くて、スーパーにある農薬がかかったきれいな野菜が好きみたいですよ」
ハニンニクの塩もみを作ってくれた娘のトモエさんがいう。
そばに落ちていた葉に、緑色の虫がついていた。
「これなに?」
「モンシロチョウの幼虫でしょ」
作業の手を止めずにツヨシさんがいう。手を近づけると指に載ってきた。かわいい。手のひらに載せて遊ぶ。虫嫌いの私がよく触れるようになったもんだと感慨深い。
「あ、うんこした!」
ツヨシさんが笑っている。
「糞は緑なはずよ。農薬がかかってない葉を食べると、緑色のうんこなるから」
確かにきれいな緑色だ。
ナカタケさんが作り方を指導したという直径2mの巨大クバ笠を見に、与那国中学に行く。今日は文化祭なのだ。クバ笠は体育館の展示スペースに置かれていた。クバの葉を40枚ぐらい使ったらしいが、相当大きい。
「お父さんは最初、直径10mのを作りたいっていったらしいんだけど、置く場所ないでしょ。それで2m。ギネスを目指したっていってたけど、どうかしらね」
とトモエさん。10mのクバ笠は、笠というより家として使えそうだ。
再びナカタケ農園に戻る。野菜市には野菜以外にもいろいろなモノが売られている。乾燥させた長命草と塩を添えたフライドポテト、魚の天ぷら、キノコ入りのジューシー、クリスマスの飾りなど。ジューシーを買って食べはじめると、ナカタケさんがヤギ汁を出してくれた。やってきたお客さんにもふるまっている。
「おいし〜!」
熱々でとってもグーである。
「お酒もあるよ」
どなんが出てきた。
「薬草茶に混ぜると酔わないよ」
アダン、月桃、ゴーヤの切れ端を冷凍しておいたものを煮出した薬草茶は、香りがよく、体にもよさそう。泡盛に入れると風味がまろやかになった。ちなみに、乾燥させるとカビるので冷凍した方が上手に保存できるとか。
「昔はよ、タバコを育てていてね」
ナカタケさんがぽつぽつ話す。
「あれは健康に悪いよ。だから作るのやめたんだ」
軍手を二重にし、ビニールをかぶせ、その上からゴム手袋をなん重にしても、タバコの収穫をしているとゴムが薄くなるとか。
しかも毛穴からニコチンが入り、ふらふら。タバコ栽培をしていると、「疲れたから一服」という気にならないらしい。ヘビースモーカーでも吸わなくなるという。タバコをやめたい人はタバコ栽培に行く、っていうのは、案外効き目のある禁煙法かもしれない、かも。