9月2日(火) 晴れときどき雨
あけぼの館に寄ると、お隣のサトーさんがいた。ネズミに困っている話をすると、ヒロミさんと3人でネズミ捕り談義に。
「“ネズぺったん”が一番だと思うわ、いろいろやったけど」
あらゆるネズミ捕りを試してきたというヒロミさん。ネズミの通り道に置くネズミ版ゴキブリホイホイがオススメだとか。
「新聞紙と段ボール箱をあらかじめ用意しといて、ぱっとくるんでさっと箱に詰めてその足でゴミ捨て場に持ってくの。死体をまともに見なくてすむようにね」
ストレスを減らすには、手際よさが大切だという。
「殺鼠剤はどうなんですか? あれだと勝手に外で死んでくれるんじゃないの?」
毒を食べたら水が飲みたくなって、外に出たところで死ぬという仕組み。死体を片づけずにすむなら、それに越したことはない。
「でもそうなるとは限らないのよ。間違って床下とかで死んだら、もう悲惨。臭くて臭くて」
なるほど。それは困るな。
「うちは普通のネズミ捕り使ってるけどね」
とサトーさん。餌を食べに来たネズミを捕まえる、昔ながらの金物のやつだ。
「かかってたら、ネズミ捕りごと海に持ってって溺死させるの」
うわっ、それもヤだな。
「ネズミが入ってくる穴を塞ぐ、って手もあるわよ」
ヒロミさん新たな案を出す。でもうちは、限りなく屋外に近い家だからなぁ。ネズミどころか、カニやらネコやら床下から勝手に入ってくるし。
結局、ネズミ捕りは仕掛けず、しばらく様子を見ることに。
家に戻ると、おじいが庭でタバコを吸っていた。
「キミもな、そろそろ畑をひとつ作らんと」
3月にはあれほどわくわくして種をまいたのに、その後、野菜作りはどうでもよくなっていた。晴れの日は朝から暑く、畑に水をまく気がしない。畑に入ると蚊に刺されるので、草取りは嫌い。それに、土をいじると手が荒れる。要はこういうことにまったく向いてないのだ。
おまけに、一念発起して種を植えても、必ず芽が出るとは限らない。ナスやニンジン、ブロッコリーは結局、生えてこなかった。まく時期を間違ったのか、種が悪かったのか。こういうこともやる気をそぐ要因だ。
ただ、オクラだけは大成功だった。おじいが朝な夕なに水をやり辛抱強く育ててくれたお陰で、毎日なん本かづつ取って食べている。種だけ提供し、あとは収穫専門、というのじゃダメだろうか?
ダメだよな。
9月3日(水) 西表はくもりときどき雨、石垣は晴れ
「おもしろいプールがあるのよ。行ってみない?」
東京から遊びに来ているユウコさんに誘われ、石垣へ。着いたところは「石垣の塩」(*1)の工場。3m四方ぐらいのプールが敷地の片隅に2つある。トイレで着替え、水にはいると、
「うわっ、体が浮く!」
隣ではボーリングの球も浮いている。プラスチック製ではない。競技用の本物だ。死海には行ったことがないが、こんな感じではないか。
このプールの水はただの水ではない。海水を煮詰めたものだ。
「にがりがぎゅっと凝縮されてるんですよ」
工場長の解説を聞いていると、なんだか肌がすべすべしてきた気がする。
力を抜くと、体がぽっかり水の上に浮いた。青空に白い雲が流れていく。目をつぶる。ユウコさんの話声が、オブラードに包まれたように、振動だけで伝わってくる。1日中たっぷりと太陽の光を浴びた塩水プールは、ほどよくぬるく気持ちいい。
「リラックスするなぁ」
「そうだね」
ユウコさんもうっとりしている。いつまでもこうしていたい気分だ。
夜は名蔵にある素敵なイタリア料理屋へ。建物も雰囲気もなかなか洗練されていて、本格派。注文したキャンティが運ばれてくると、懐かしい都会の香りがした。料理もボリュームがあり、安くておいしい。知る人ぞ知るお店である。
ちなみに、隣は某若手女優の別荘らしい。
(*1)「石垣の塩」: