昨年秋、不発弾が浦内川のほとりで見つかった。その爆破処理が今日、外離島の浜で行われるらしい。
お知らせはしばらく前から西表のスーパーに張ってあり、長崎さんも知っていた。
「自衛隊が雇った船が迎えに来るんだよ、島民を避難させるために。これまでもなん回かあったなぁ」
税金も払わず住民登録もしていない自分ひとりのために、自衛隊が雇船してまで避難させに来てくれる。VIP扱いを受けることに気をよくしているようだった。
生活に大きな変化のない外離島では、自衛隊がやってくることは一大イベント。昨日、観光客を連れて来た屋良さんが、
「明日は朝の10時ごろ来ますね」
と知らせてくれたものだから、それまでに朝食を済まし、身支度をした。長崎さんは気分を盛り上げるためか、米軍払い下げの野戦用迷彩服上下でキメている。
ところが、10時半を過ぎてもいっこうに船の気配はなし。
「中止、ってことはないよね?」
と私は気をもみ、短気な長崎さんはイライラしはじめ、1日5本(起き抜けと寝る前に1本、毎食後に1本)と決めているタバコをバクバク吸っている。
11時過ぎ、7人の自衛隊員と駐在さん2名が、屋良さん、池田さん(*1)のボートに分乗して到着。森の御殿から200mぐらい離れた大きな岩を目がけて上陸しはじめた。
「なんでこっちに船を着けないんだ!? 向こうからこっちに迎えに来ない限り、わしゃ行かんからな。そういっとって!」
すねている。仕方がないので私だけボートに向かって走りはじめた。ふと気づくと長崎さんも追っかけてきている。
「遅いじゃないですか!」
「いやぁ、ちょっといろいろあって出発が遅れまして」
責め口調の長崎さんに屋良さんがすまなそうにこたえる。
さっそくボートに乗り、駐在さんたちと共に沖で待機。双眼鏡で自衛隊の仕事を見守る。しかしなにか問題があるようで、しきりに本部と無線で交信している。
「岩陰に埋めておいた不発弾が見つからないってよ」
後ろの方でだれかがいう。さっきから場所を変えてなんども穴を掘っていたのはそのためか。
そうこうしているうちに不発弾は無事発見され、爆破準備完了。私はしっかりカメラをかまえ、その瞬間を待つ。
合図と共に「ドーン」と鈍い音が遠くの方でした。と同時に砂煙が小さく上がる。これで終了。あっけない。戦争映画を見ている方が、間近で迫力がある。
後で爆破したあたりに行ってみたら、直径3mぐらいの穴があいていた。周囲をじっくり観察すると、かなり離れたところに不発弾の破片が残っている。いただいておこう。
午後、潮が引いたとき、内離島(*2)の方まで散歩に出かける。長崎さんのいる浜からぐるっと周り、内離とつながるあたりまで来ると、ゴミがものすごい。風向きのせいで長崎さんの浜にはそれほど流れ着かないが、ここにはあらゆるゴミが打ち上げられている。船の備品の浮きやロープ、網はもちろん、洗剤のポリ容器、靴、ビーチサンダル、発泡スチロール、お菓子の袋、ペットボトル、ビン、缶、石けん箱などなど。大型のものでは冷蔵庫に洗濯機、テレビ、ラジオなどもある。容器や袋に書かれた文字からすると、中国や韓国から着いたものも多いようだ。
「いつ来てもここはゴミだらけ。年々、海の水が汚さを増しているしね。もっと海が汚れて海水で米がとげなくなったら、この島にも住めなくなるな」
日本一美しい海、といってもいい過ぎではない島で、長崎さんは危機感を募らせている。自然環境の変化を感じるのは、海水の汚れからだけではない。ここ4年ほど台風の進路が変わり、西表をさほど直撃しなくなった。そんなことも地球温暖化と関係があるのではないか……。
(*1)池田さん: 白浜〜船浮を結ぶ定期航路を運行する船浮海運のオーナー。
(*2)内離島: 外離島の隣にある無人島。干潮になると陸が現れ、外離島・内離島は歩いて渡れる。