5月22日(月)〜27日(土) 「海神祭〜優勝への誓い・その1〜」 晴れとか雨とかくもりとか

5月22日(月) 晴れ

今年もあと1週間ほどで海神祭がやってくる。

夕方青年が公民館に集まり、サバニを保管庫から出した。3年ぶりの優勝をねらう婦人たちも、浜にぱらぱら集まってくる。今年初の練習だ。

本番と同じ10人には足りないが、とりあえず集まった婦人全員で舟に乗る。ゆいさー、ゆいさーとかけ声を合わせて漕ぐが、なんだか舟が重い感じがする。いつまで経っても舟が沖の旗に着かない。こんなに遠かったかな? これから少しずつ勘を取り戻さなくては。


5月25日(木) 晴れ

 雨で2日間練習が中止となり、3日ぶりに浜に行く。背筋と腰の筋肉が痛いのは年齢のせいか?

 練習は、順調なのかどうかわからないが、みんなで一生懸命やっている。パワーはともかくとして、青年より婦人の方が、まじめにこつこつ努力を重ねる傾向がある。基礎体力のある若い選手をそろえて、練習を繰り返せばいい線いくのではないか。


5月26日(金) 晴れ

毎日夕方行われる練習には、選手の青年、婦人、コーチ役の先輩方が集まってくる。つまり村の人ほとんどが浜に集合している。

当然、子供たちもやってきていて、お父さんやお母さんが練習するのを見ながら海で遊ぶ。お母さんが舟に乗ると、
「行かないで〜」
と泣く子もいるが、その間はお父さんが面倒を見る。お父さんがまだ帰っていない場合は、その場にいる子供好きのおばさんが、とても自然にだっこしてあやしたりしている。私が海神祭の本番より練習が好きなのは、こういうのんびりしたコミュニティの風景が気に入っているからだ。

練習が終わってたあとは、お父さん、お母さん、子供たちが一緒に海に入り、一家そろって水遊び。家族にとって、とても幸せな時間だろう。自然に恵まれ、夜中まで残業することのない田舎暮らしのよさだ。

今日は夕方までよく晴れて、干立の海の向こうに与那国がきれいに見えた。


5月27日(土) 晴れのちくもり

 夕方、ハーリーの練習に行く。やる気満々の婦人部はメンバーがそろったのに、舟の舵を取る舟頭がまだ来ていない。公民館でなにか仕事をしているようなので、若い子が呼びに行くと、
「たまには自分たちで漕いだら?」
 といわれたらしい。

「どうする? 自分たちだけで乗る?」
だれからともなくそんな相談をはじめたが、なかなか踏み切れない。私たち漕ぎ手はエンジンみたいなもので、前に進む力はあるが、舵取り専門の舟頭がいないと基本的に方向転換できない。帰ってこられないかもしれないのだ。

サバニが転覆したり、投げ出された人が流されたりしたことを何度も見てきたナリコさんは、
「危ないからやめなさい」
 という。自分たちだけではやったこともない方向転換を、沖で、一か八かでやるのはたしかに危険だ。

 でも、私たちのこのやる気はどこにぶつけたらいいのか? せっかく全員そろっていい練習ができそうなのに。

 ぼんやり立っていてもしょうがないので、先輩方に櫂の漕ぎ方などを浜で指導してもらう。今回、はじめて舟に乗るトモコちゃんは、すぐにやってみたいようで、浜にぺたんと座り、まじめな顔をして櫂を持ち、教わったように動かしている。本当は海で実践したいのだろう。私も沖に出たい。

しばらくすると、舟頭ができる青年がみつかり、
「やろう!」
 ということになった。みんなで喜ぶ。青年部員は来ていなかったので女性だけで舟を水際に運び、海に出る。

スタートした直後のかけ声は「ハイ!」。ハイ、ハイ、ハイ、ハイ……と早いリズムで舟を波に乗せ、10かきしてからはペースを少し落とし、「ゆいさー」に変える。最初の「ゆいさー」で右側の5人が漕いだら、次の「ゆいさー」で左の5人が櫂をかく。そうして交互に、リズムよく漕いでいくのだ。

今日はいつもと何かが違った。私の後ろにはカヨコさんが乗っていた。カヨコさんの伸ばしたヤコは、私のすぐ横の水面に入っていく。それを見て気づいた。そうか、体をうんと前に倒してヤコを水に入れなくてはいけないのだ。となると私も、前の座席に座っているトモコちゃんの前までヤコを出すべきだ。私はこれまで櫂のかき方が甘かったのだ。

開眼した私、習ったとおりに漕いでいるトモコちゃんをはじめ、浜で教わったことが、なにかみんなのヒントになったようだ。心をひとつに合わせ、真剣なかけ声に乗り、舟がぐんぐん進んでいく。

いつもは減速する沖のターンも、すーっと曲がりスピードが落ちなかった。後半、かけ声が弱くなると誰かが大きな声を出し、みんなの元気が戻った。

浜に戻った私たちは、だれもがうまく漕げたことを実感していた。
「なんだ、軽いじゃん」
とヒロコさんが誇らしげにいう。確かに、軽々と漕いでいたはずだ。そして、軽々と勝負に勝てるかもしれない。

一部始終を見ていたナリコさんが寄ってきて、いった。
「今のは早かったね」
いつも辛口のナリコさんにほめられるなんて珍しい。みんなちょっと鼻が高かった。


top