今回の風邪は熱が出なかったのと、ヨモギ&ショウガのスペシャルホットドリンクをがぶ飲みして汗をかいたのがよかったのか、丸2日寝ていたら治った。今朝は「よし、今日は走ろう!」と決め、道路掃除に出かける。ドリンクなどの補給を行うエイドステーションを、毎年公民館で毎年出しているのだ。
少しくもっていたが、天気は上々だ。道路脇の小枝や葉をはきながら、沿道に花の咲いたプランターを置いていく。11月に植え、やまねこマラソンの日に花盛りとなるように準備しておいたものである。
体を動かすとふらふらするので、やはり走るのはやめようかとまた迷うが、しばらくする頭がしゃきっとしてきた。2日も寝ていたので体がなまっていたのだろう。
10時半、干立からマラソンに参加するヒロコさん、マサコさんを乗せて、会場へ。朝、空にかかっていた雲はどこかに行き、快晴になっている。受け付けの体育館はすでに人でいっぱいだった。エアーサロンパスの臭いが充満していて、その中でみんな、ご飯を食べたりおしゃべりしていた。私たちもおにぎりをもらい、あけぼの館で食べることに。
12時半ごろ、あけぼの館を出る。スタートは目の前の上原小学校だ。大勢の人が運動場でウォーミングアップにジョギングしているのを見て、
「私も走るべきかなぁ」
と迷うが、たとえ体慣らしでも10km以上走れる体力はない気がするのでやめておく。ヒロコさん、マサコさんと3人で写真を撮ったりしたあと、23kmに出場する彼女たちと別れ、10km出場者の列の後ろについた。
スタート前の10分間はみな緊張気味だ。知り合いを見つけて話をするが、なんとなく所在がない。
「スタート1分前!」
声がかかると、静かになった。
「30秒前」
うぉーと叫びたくなる。
「10秒前」
もうだれもしゃべる人はいない。奇妙な沈黙。カウントダウンが終わり、スタートの号令がかかる。どどーっと人が流れ出した。
自分のペースで走ろうと、前の人を抜いたり、うしろのだれかに抜かれたり。だんだんペースのあった集団ができてくる。ニット帽をかぶったのっぽのカレシとやまねこマラソンTシャツの小柄な女の子のカップル。スカイブルーのTシャツの男の子、つばのある帽子を目深にかぶった女性など。この人たちとは走るペースが一緒で、彼らの集団についていけば最後まで走れるような気がした。
沿道にはたくさんの人が応援に出ている。やまねこの絵を描いた手作りの紙のお面をかぶり、カチャーシーでおうえんしてくれるおばあには、ランナーも走りながらカチャーシーで応えている。乳母車に乗せられた赤ちゃんもいる。
「頑張って!」
という声援とともに手を振ってもらうと、
「頑張ろう!」
という気がわいてくるのが不思議だ。
「みなさんの応援に励まされて、最後まで走れました」
なんていうコメントをよく聞くが、その気持ちがよくわかる。応援に立っている知りあいを沿道に見つけるのも、ほっとするようでうれしい。
浦内までくると、最初のエイドステーションだ。アミノバリューを飲みたかったのだが、どれだかわからない。適当にとったらポカリスエットだった。ごくごく飲みたいけれど、走りながらは難しい。かといって立ち止まるのはめんどうなので、少しだけ飲んで、紙コップごと道路に捨てた。もったいないがしかたがない。
去年までエイドステーションを手伝っていたので、ゴミ袋を探してきちんと捨てていくランナーが少なくないことを知っていたが、私にはそんな余裕はなかった。紙コップをゴミ袋に捨てていくランナーはほんとうにえらいなぁと、走りながら改めて感じる。
工事中の山道にさしかかると、折り返してくるトップの人と出会った。早い! 私なんかまだ、3.5kmぐらいしか行ってないのに、同じ時間に彼は6.5kmも走ったのだ。
このころには私にも少しゆったりした気持ちが出てきていた。ランナーにはいろいろな人がいた。夫婦で走りながら、気に入った場所で止まりビデオを撮っていたり、「イチニ」「イチニ」と交互に替えを掛け合いながらカップルが走っていたり。ときどきカメラやケータイを取りだし写真を撮っている人は、私を含めて少なくない。走りながらの人間観察も、なかなかおもしろいものだ。
浦内橋を越えたところで無事に折り返し、復路につく。帰りも無我夢中である。
血潮が騒ぎ出したのは、ゴールの手前500mにさしかかったころ。沿道でガンガン鳴らしている銅鑼の音を聞いた瞬間だ。全身の血が逆流するような、ぞぞっとした感じがした。武者震いだ。
そのとき、私の中でなにかのスイッチが入った。足が自然と速まる。
「あともう少し……」
そう感じるとさらにスピードが出る。3人抜く。
「もっともっと……」
はやる気持ちに足がついていく。9月の西表校の運動会で、足がもつれそうになりながら走ったときとは明らかに違う。
余力を残してゴールしてもしょうがないじゃないか、と思うと、さらに加速度がついた。5人……7人……10人……。追い越しながら、短距離走のようなスピードで駆け抜けていく。最後にこんなに走れるなら、途中でもっと頑張っておくべきだったんじゃないか?
そしてゴール! もうひとり抜こうと思っていた女性に追い上げを気づかれ、逃げ切られたのがくやしいが、完走はできた。記録証をもらうテントの下で、上がった息を整える。タイムが計測されている器械をシューズからはずさなくてはいけないが、しゃがめない。
するとボランティアの中学生が声を掛けてくれた。
「計測器をはずしましょうか?」
うなずきながら「はい」というのが精一杯だ。彼女は私の足元にしゃがみこみ、シューズのヒモから計測器をはずして渡してくれた。だれの発案か知らないが、こんなにありがたいボランティアはない。
記録は1時間9分46秒。総合順位は321位で30代の部では46位。年代別では前から3分の1ぐらい、全体では真ん中ぐらいの成績だ。ビリから数えてなん番目ぐらいかと思っていたので、予想以上に早くてうれしい。地元の人に応援してもらうために、来年は干立を通る23kmのハーフマラソンに、ぜひチャレンジしたいぞ。