12月12日(月) 「ノネコ捕獲大作戦〜説明会・その2」 くもり

このノネコの生活環境に大きな変化が迫っていた。西表にはゴミ焼却場がなく、特に西部地区では家庭から出るすべてのゴミは各集落のチリ捨て場に投棄され、野焼きされている。リサイクルできる一升瓶やペットボトル以外、生ゴミから瓶、缶、ビニール、プラスチック、粗大ゴミなどすべてが燃やされているのだ。

しかし西表にもゴミの最終処分場が完成することになり、東部地区ではすでにチリ捨て場を閉鎖し、分別回収を始めている。西部地区でも間もなくチリ捨て場を閉鎖することになっていた。チリ捨て場がなくなると、そこを餌場にしているノネコはエサを求めて人家の周りに行き鳥を襲ったり、畑を荒らしたりするかもしれない。あるいは山に入り、ヤマネコとエサの奪い合いになる可能性もある。そこで問題となるのが、ネコエイズだ。

午後8時。干立公民館で行われたノネコ捕獲調査の説明会に集まったのは10人ぐらい。ネコを飼っている人たちのほかにも、関心のある人が数人顔を見せている。話をするのは沖縄本島からやってきた沖縄県獣医師会のクリハラ先生だ。

西表島のネコからはすでに、エイズネコが見つかっている。一方ヤマネコからは幸い、まだ発見されていない。しかしイリオモテヤマネコと同様稀少なツシマヤマネコの中には、すでにエイズにかかった個体もいる。

ネコエイズは交尾では感染せず、血液を介してうつる。たとえばヤマネコとエイズにかかったノネコがエサを取り合いケンカしたとしよう。互いに傷を負ったとき、エイズノネコの血がヤマネコの傷口に触れるとエイズに感染する可能性が高いらしい。

「そこでチリ捨て場が閉鎖される前に、チリ捨て場や周辺のノネコを捕獲し、病気にかかっていないか検査して状況を把握したいのです。そしてノネコを野放し状態から人の管理下におくことが今回の捕獲調査の目的です」
ぽっちゃりしたニコニコ笑顔のクリハラ先生がおだやかに説明する。

捕獲したネコは、去勢、避妊手術をし、エイズ検査、白血病検査、ワクチン接種、個体識別のためのマイクロチップ埋め込みを行う。間違って飼いネコが捕獲されている可能性もあるので「これはわが家のネコ」という人が現れれば引き渡し、それ以外のネコは島内で飼い手を探す。引き取る人がないネコは沖縄本島の「シェルター」と呼ばれる施設に送り、さらに飼い主を募るがそれでも見つからない場合、天寿を全うするまでシェルターでお世話してもらえるという。

捕獲されても殺されるわけではなく、むしろ手厚く飼育してもらえるとわかり、会場の空気がなんとなく緩んだ。入ってきたときは緊張気味だった三好さんもリラックスした表情である。

「ちなみに、さっきチリ捨て場に1つワナをかけてみたら、さっそくかかりまして」
 クリハラ先生がそういったとき、三好さんちのネコじゃないか、とすぐに感じた。よくチリ捨て場で遊んでいるからだ。
「この中にいらっしゃる方のネコだったりしませんよね」
 そういいながら、箱のようなものにかけてあった新聞紙を取る。ステンレスワイヤーでできたケージに入っていたのは、まさに三好さんのネコだった。最初はおとなしくしていたが、大勢の人がいっせいに近寄ったので興奮し、キーキー鳴いている。

「うちのやな」
 ネコに顔を近づけ、あやすようにしながら確認する三好さん。
「やっぱりうちのや」
 増えすぎて飼いきれない、引き取ってほしい、という状況は相談してあったようで、ネコは三好さんに返されず、そのままクリハラ先生が連れて帰ることになった。そして残りのネコもいよいよ明日、引き取られていくのだ……。


top